元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。36回目は「WBC1次ラウンド収穫と2次ラウンドへの課題」です。

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 侍ジャパンが4大会通じて初となる1次ラウンド3戦全勝で12日開幕の2次ラウンドにコマを進めた。

 強化試合から打線が湿っぽいなど懸案材料はあったが、不安は払拭(ふっしょく)された。打線もほぼ全員打っており、スランプすぎる選手は見当たらない。

 収穫と課題もはっきり見えた。

 良かったのは足を絡めて加点できたこと。初戦のキューバ戦は3盗塁、中盤まで投手戦となった2戦目オーストラリア戦の盗塁はなかったが、3戦目の中国戦では田中が2盗塁と計5度のスチールが3度得点に結びついた。隙あらば走る姿勢は、2次Rでも相手投手の神経を揺さぶり、ピッチングへの集中力の妨げとなる。

 打つべき主軸が打った。初戦は筒香が先制、ダメ押し弾、2戦目は中田が決勝弾、筒香も1発を放った。石川、菅野ら先発投手も試合を作った。青木と山田の打撃がもう少し上向けば、怖いものなしだ。

 特に捕手にも注目していたが小林の打撃が好調。守りにもいいリズムをもたらしているようだ。2戦目(オーストラリア戦)の5回に2ボールからタイムを取ってマウンドに行ったシーンは素晴らしかった。1死満塁の最悪の状況下でここしか行けないという「2ボール」の最高のタイミング。二塁ゴロ併殺に仕留めた岡田のボールはお世辞にもいい球ではなかったが、小林の間合いが打者の打ち損じを誘って無失点で切り抜けられた。あのまま小林がマウンドに行かなかったら2、3点取られていてもおかしくなかった。

 初戦では二塁菊池と中堅青木のスーパープレーが4、5点防いだといってもいい。

 ミスが許されない場面で随所に出た好プレーがチームを救った。1次Rは守備からリズムをつくっていった印象、2次Rももちろん守備からリズムを作りたい。

 2連勝で3戦目(中国戦)は出場機会のなかった野手、投手を起用できたのも大きい。雰囲気を体感しながらプレーすることで次戦に向けて力みも取れる。田中を1番打者で起用するなら3番山田のパターン、中堅青木に万が一が起きた場合など“有事”も想定し、鈴木を中堅起用しハマり具合を確かめた。

 1次Rの戦いぶりは100点満点だっただけに2次R初戦では布陣を大幅変更しにくいだろう。だからこそ3戦目(中国戦)でいろいろ試すことができたのは大きかった。

 1次Rでは後手に回るシーンがあまり見られなかった。2次R以降、ベンチの危機管理として、劣勢に回った場面での対処法を何パターンもシミュレーションしておく必要があるだろう。

 2次R以降の課題は、ちょっぴり本調子じゃない青木、山田、則本をどう起用していくか。青木、山田は野手で毎日試合に出ているうちに大会期間中にはどこかで状態も上向いてくるだろう。

 1つ誤算だったのはプールAで韓国が1次R敗退したことか。オランダ1位、韓国2位の可能性もあっただけに、2次R初戦で韓国戦なら則本、キューバ戦石川、オランダ戦菅野のローテでいく予定だったと思う。

 予想に反して、侍ジャパンの2次R初戦は、強豪オランダとなった。初戦からフルスロットルでいかねばならない。オランダ、キューバは石川、菅野で踏ん張りどころ。オランダ戦が鍵。そこで敗れるとデスパイネの好調なキューバ、勢いに乗るイスラエル戦と厳しい道のりを歩かねばならない。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。


(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)