元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。54回目は「プロ野球開幕2カ月の通信簿~12球団」(パ・リーグ編)です。

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 3月30日に今季のリーグ戦が開幕してから早くも約2カ月が過ぎた。下位にいるチームも、まだまだ挽回は可能な時期だが、29日から始まる交流戦を前に12球団を投打に分けて個人的に5段階評価してみた(5月27日現在)。

※花丸=文句なし、◎=すばらしい、○=良い、△=もう少し、×=早急な改善を

◇パ・リーグ

【1位 西武 攻撃力花まる、投手力◎】

 山賊打線とネーミングされるほど、打線の破壊力はハンパない。5月27日現在、45試合を消化し、チーム打率2割7分9厘。序盤は、福岡ダイエー(現ソフトバンク)が2003年に樹立したチーム打率2割9分7厘のプロ野球記録にも届くのではと期待させたほどだった。約3分の1の試合数を消化し、トータルで見ると好スタートだろう。

 森を捕手起用しながら、打撃も期待できることで打線も厚みを増している。ここまで43試合に出場し打率2割8分4厘、25打点、4本塁打とまずまず。同ポジションの炭谷も18試合で打率3割5厘と森との相乗効果でバットも振れているようだ。

 開幕前から投手陣が不安要素だったが、ここまで奮闘しているのでないだろうか。中継ぎ陣では昨年まで在籍した牧田、シュリッターがいなくなったが、野田、平井、ワグナー、増田、武隈らが中継ぎで頑張っている。ここ最近、リリーフ起用されているが、阪神から移籍した榎田は開幕から先発で4勝1敗と好調だった。菊池雄星が一時離脱したが、多和田が7勝1敗とエースの穴を埋める活躍だ。防御率2点台の十亀はもっと勝ち星が増えてもおかしくないのだが。

<注目投手の成績>

野田(19試合登板 0勝0敗5H、防御率3・00)

平井(21試合登板 0勝1敗6H、防御率3・50)

ワグナー(18試合登板 2勝1敗4H、防御率2・60)

増田(15試合登板 0勝2敗7S、防御率3・38)

武隈(20試合登板 1勝0敗9H、防御率3・31)

榎田(7試合登板 4勝1敗、防御率2・33)

多和田(9試合登板 7勝1敗、防御率3・15)

菊池(6試合登板 5勝0敗、防御率3・86)

十亀(8試合登板 3勝5敗、防御率2・60)

 交流戦前の1週間、チームは2勝4敗と調子を落としたが、1日から復帰報道のあるエース菊池雄星が、復活できれば2008年以来10年ぶりのペナント奪回も現実味を増してくる。


【2位 日本ハム 攻撃力○、投手力◎】

 投手防御率は、パNO・1の3・56。チーム得点はパ5位の176得点。投手陣の踏ん張りが目立つ。打線は日本ハム得意の集中打で得点し、少ない得点を投手で守って勝つ。打線は水ものと言われるだけに、打てなくても勝てるチームが理想で、本当の意味での勝ちきる戦法だ。2011年にセを制した中日は打率2割2分8厘(セ6位)ながら少ない得点を守りきって優勝した例もある。

 ディフェンスを支える投手陣では、昨季抑えを務めていた増井が移籍したが、トンキン、石川直、西村が救援で、マルティネス、上沢らが先発で奮闘。若手の活躍もめざましい。

<注目投手の成績>

トンキン(20試合登板 2勝0敗10S4H、防御率2・29)

石川直(21試合登板 0勝1敗5S11H、防御率3・86)

西村(21試合登板 1勝1敗1S7H、防御率2・55)

マルティネス(8試合登板 4勝4敗、防御率2・68)

上沢(8試合登板 5勝1敗、防御率1・18)

 首位を狙うには、打線の安定感(得点力など)をアップさせたい。打線の調子が上がっていけば、2年ぶりの優勝も見えてくる。


【3位 ソフトバンク 攻撃力○、投手力○】

 けが人が続出した。別の味方をすれば、最多勝の東浜、セーブ王サファテ、最優秀中継ぎの岩崎がけが、そして勝率1位の千賀、武田ら本調子でない中、普通なら最下位だが、貯金ゼロでしぶとく3位に踏みとどまっている。投手陣はここが踏ん張りどころ。けが人が戻ってくるまで耐えられるか。打線は3冠王を狙えそうな柳田がチームをけん引する。工藤政権で過去3年すべて最高勝率を誇る得意の交流戦で息を吹き返すか注目だ。上位進出の鍵はけが人の復活。


【4位 オリックス 攻撃力△、投手力◎】

 交流戦前の1週間は4勝2敗で借金も1となり、チーム状態も上向いている。5月の勝敗は13勝9敗で日本ハムと並びリーグトップだった。もともと個々の戦力はしっかりしており、けがでフルシーズン戦い抜いたことがない期待のスラッガー吉田正尚も打率2割8分3厘、29打点、7本塁打と、ここまでは順調だ。打線で言えば、9試合出場で打率3割2分1厘の宮崎は除き、レギュラークラスで3割打っている選手がいないのは寂しいところ。

 4位にいるのは投手陣の踏ん張りだ。チーム防御率は3・58でパ2位、得点は171点でパ6位。日本ハムと非常によく似た傾向が数字に出ている。アルバース、田嶋の活躍が大きい。本来なら金子、西で貯金を作りたいところだが、アルバース、田嶋で貯金計8を作っている。中継ぎは沢田、吉田一、抑えは増井が頑張っている。昨年まで先発起用していた山本は、中継ぎ起用で安定感が出てきた。

 上位進出の鍵は、金子、西が本来の実力を発揮してくれば面白い。

<注目投手の成績>

金子(7試合登板 1勝4敗、防御率3・99)

西(9試合登板 2勝5敗、防御率3・06)

アルバース(8試合登板 6勝1敗、防御率2・13)

田嶋(8試合登板 5勝2敗、防御率3・09)

沢田(18試合登板 2勝0敗1H、防御率1・00)

吉田一(21試合登板 2勝1敗2H、防御率2・78)

増井(20試合登板 1勝0敗12S1H、防御率2・49)


【5位 ロッテ 走塁含めた攻撃力○、投手力△】

 開幕前から不安要素だった先発のコマ不足は解消されていないが、ボルシンガーがいい活躍を見せている。若手の渡辺、土肥、有吉も奮闘しているが、どこまでポテンシャルがあるか期待したい。逆に期待された唐川、酒居、二木が今ひとつ。涌井もエースとして期待が大きいだけに4勝では物足りない気もする。

 チーム防御率が4・00(パ5位)チーム打率2割4分9厘(同4位)本塁打数22本(同6位)と本塁打数が目立って低いだけに走塁面でカバーするしかない。

 昨季のチーム盗塁数は78個。今季は走るイメージが印象深いが企画数69個に対し成功が48個で成功率は70%。最低75%はほしい。攻撃陣は荻野、中村が頑張っている。荻野の出塁率がロッテの得点の生命線。

<注目投手の成績>

涌井(9試合登板 4勝4敗、防御率3・96)

唐川(3試合登板 0勝3敗、防御率6・35)

酒居(5試合登板 1勝1敗、防御率7・36)

二木(4試合登板 2勝2敗、防御率4・35)

ボルシンガー(7試合登板 5勝1敗、防御率2・11)

土肥(2試合登板 0勝0敗、防御率3・48)

渡辺(2試合登板 0勝0敗、防御率4・50)

有吉(15試合登板 0勝1敗2H、防御率4・63)

 上位進出の鍵は、投手陣をどこまで整備できるか、若手投手がハマれば。


【6位 楽天 攻撃力△、投手力△】

 守護神松井の不調がチームにとっては痛い。開幕序盤で勝てる試合を落とし、波に乗りきれなかった。美馬も0勝5敗。則本(4勝)、岸(4勝)、辛島(3勝)に続く投手の名前が出てこない。中継ぎ陣も福山、高梨、菅原、松井らの状態が安定せず。昨季、中継ぎの活躍が上位争いを演出したが、今季は厳しい状況となっている。

 攻撃陣も茂木、ペゲーロらに昨年の勢いがない。ペゲーロは本塁打を12本打ってはいるものの、打率2割3分1厘は少し低い。アマダーは現在2軍、ウィーラーも打率2割6分2厘、4本塁打、15打点では寂しい。スタメンに3割打者不在でチーム打率も2割2分8厘(パ6位)盗塁23(同6位)防御率4・16(同6位)では浮上できない。

 上位進出の鍵は、守護神松井、外国人の復調次第。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。