例によって個人的な話からで恐縮ですが、ほとんど、いや、まったく酒が飲めません。

 知り合う人たちはみんな「ふーん。どれほど飲むんだという顔をしてるのにね」と、同じことをおっしゃるので、それはどういう意味だろうといつも思うのですが、とにかく飲めない。

 ちょっとでも飲むと呼吸困難気味になるし、顔どころか目の玉まで真っ赤になってこわいし、動悸(どうき)も激しくなります。

 大学時代は無理に飲まされたりしたけど、さすがに書きにくいようなエラいことになりました。

 大体が、おいしいと思えない。梅酒のソーダ割りとか甘いカクテルとか、少しならおいしいかも、と思うけどそれならジュースでいいし。

 そんな男が、なんと居酒屋で日本酒を頼む瞬間があります(どうでもいいですが)。我々、関西人は「お造り」といいますが、ようするに刺し身。これを本格的に食べたいときだけ、日本酒をほ~んの少し、なめながら食べるのです。

 なぜか。ジュースやお茶でお造りを食べると、どれだけ活きが良くても、ほんの少しだけ生臭さというかサカナ-ッ! という感じが漂う。

 しかし日本酒をなめると、あら不思議、これが消えていい感じになるのです。

 この食べ方を教えてもらったのは権藤博さんからです。

 オールドファンなら懐かしい「権藤、権藤、雨、権藤」の、あの権藤さんです。

 日刊スポーツで評論の仕事をしていただいており、あるとき名古屋で食事の席に呼ばれました。

 権藤さんはビール党で、基本、最初から最後までビールを飲む。結構、この世界はこういう方が多くて、いつの間にかお店のビールがなくなるというおそろしいこともたびたび起こります。

 そんな権藤さんが、お造りを食べるときにめずらしく「ちょっと日本酒」と注文するので、理由をたずねると、先に書いたことでした。

 ではこちらも試しましょうということで、チョロッとなめると確かに、その通り。「これはいい!」と言うことで、調子に乗ってなめては食べ、なめては食べとしていると「おまえ、飲んでないか?」と心配されたりしました。

 御年78歳の権藤さんですが元気そのもの。会話も様子もその年代の人とはまったく思えない調子です。

 そして今は言うまでもなく、侍ジャパンの投手コーチの大役を務められています。

 短期決戦というか、こういう大会でなにより難しいのが投手起用でしょう。そこにこの重鎮を起用した小久保監督、生意気ですがなかなか味があるなと思っています。

 WBC本番が近づいてきました。3日、阪神との壮行試合が行われた京セラドーム大阪で久しぶりに話をしました。

 「カラダはどないですか?」と体調を気遣うと「しっかり歩いてビールを飲んでいれば大丈夫だ」と笑われました。

 ついでに藤浪の先発起用も頼んでおきました。なぜ私が頼むかは意味不明なところもありますが。

 「そのうちな。順序を踏んでな」とこれも笑っておられました。

 選手だけでなく首脳陣にも注目の世界大会です。