「今回は期待に沿わない結果になってしまって…。ホントに…」。いつになく元気のない声の主は広島緒方孝市監督でした。

 DeNAに敗れ、クライマックスシリーズ(CS)敗退が決まった後、お疲れさん! の握手をしたときに思わず漏れた言葉です。

 昨年の日本シリーズでも、やはり、マツダスタジアムで日本ハムに敗れ、日本一を逃したときに話したときよりも元気がなかったように感じました。

 せっかく連覇を果たし、「今季こそ日本一だ」という願いを背中に受けながら、常勝ソフトバンクとの頂上対決にたどり着く前に夢がついえてしまったのだから無理もありません。

 今回のCSファイナルは昨季まで在籍し、25年ぶり優勝に貢献したOBの黒田博樹さんとともにマツダスタジアムでの戦いを見るという「特別ミッション」で広島に出向きました。

 「予想外です」とその黒田氏も言っていたように、野球ファンの多くが広島の突破を信じて疑わなかったと思います。しかし、これが現実でした。セ・リーグで唯一、広島に勝ち越していたDeNAはやはり強かった。

 こうなった理由として、DeNA、広島の各担当記者、さらに黒田氏の言葉として記しているので多くは書きませんが、ひと口で言えば「王道路線」で臨んだ広島と「明日なき決闘」で戦ったDeNAの差だったかもしれません。

 話題になったラミレス監督の継投は本当に迫力があった。先発投手が試合をつくり、その間に打線がつながって、最後は勝利の方程式で…というシーズン中通りの戦いをした広島が敗れたのです。

 しかし、あえて言いますが、これは、どちらがどうとは言えない。もしも今永や浜口が慣れないリリーフで打たれていれば、評価は変化していたと思います。

 さらにシーズンを圧倒的に勝ってきた広島が、王道路線を歩もうとしたことにも不思議さはないとも考えます。

 1つだけハッキリ感じるのは、このコラムの直前の回で書いたように、阪神との信じられない雨中の決戦を制したDeNAにあって「これは決闘」と言った筒香が象徴するように若い選手の勢いが全開になったことです。

 まさかの敗退。印象に残ったのは敗退決定後に広島の3番打者・丸佳浩が言った言葉でした。

 「短期決戦がどうとか、いろいろ言われるけど、結局、自分たちの実力がなかったということ。実力があればこうはならない」

 丸に関しては他にも「おっ」と思ったことがありました、先制2ランを打った23日の試合に勝てずに迎えた翌24日の試合前練習。丸に冗談ぽく、しかし本音も含めて、声を掛けました。 「分が悪いな。ホンマ、丸くんが打っても1本じゃ勝てんで」

 丸はキッパリと返してきました。

 「そうですね。じゃあ3本、打ちますか」

 実際にはこの試合も先制適時打の1本だけでしたが、主力選手として広島を引っ張る心意気を感じたものです。

 阪神-DeNAのファーストステージからファイナルまでセCS全試合の現場取材を、おかげさまで完走させていただきました。思ったことは1つです。

 「やっぱりプロ野球はおもしろいぞ」。

 DeNAとソフトバンクの熱闘が期待されます。