練習を終え笑顔を見せながら宿舎に引き揚げるマルテ(撮影・上田博志)
練習を終え笑顔を見せながら宿舎に引き揚げるマルテ(撮影・上田博志)

この日、宜野座の最高気温は26度だった。「さすが南国・沖縄やな」。そう思うかもしれないが、この時期にここまで気温が上がるのは地元でもめずらしい。沖縄気象台は前日18日、同地方に「高温に関する異常天候早期警戒情報」を発表している。

この日の天気予報は午後から雨だった。午前中は蒸し暑さでフラフラになるほど。韓国KIAとの練習試合は当初の試合開始時間を10分だけ早めて始まった。しかしザーッと来た降雨に負け、中止になった。ファンもメディアも期待していた新加入ジェフリー・マルテの“対外試合デビュー”はお預けとなった。

さっさと宜野座を後にしたKIAには日本人コーチがいる。正田耕三。広島の内野手として鳴らし、引退後は阪神などでコーチを務めた。最近は韓国球界で指導を続けている。そんな正田の名前がメディアに盛んに出たのは昨春だった。理由は昨季、阪神にいたウィリン・ロサリオだ。

大リーグ経験のあるロサリオだが16、17年と韓国ハンファで2年連続3割30発以上をマークしたことで名を売り、阪神に来た。そのロサリオをハンファで指導したのが正田だったからだ。

期待通り、ロサリオは昨春のキャンプではすさまじい打棒を披露した。だが開幕後は調子が上がらず、1年限りで自由契約となった。正田にあいさつをすると、どうしてもその話題になってしまう。

正田 う~ん。なあ。あかんかったなあ。左のカベを意識し過ぎて右足がうしろに下がる変な打ち方になってたもんな。なんでかな。指導がうまくいかなかったんかなあ。

和歌山出身の正田は首をひねりながら、そう話した。指導方法については昨季から焦点になっていたが、それだけでもない。やはり日本独特の内角攻めで打撃を崩された面はあるのだろう。若者風? に言えば「助っ人選手あるある」なのだ。

新しく来たマルテには、そこをどう伝えているのか。打撃コーチの浜中治に聞いてみた。浜中は慎重だった。

「まだ特に何も言ってないです。対外試合もまだだったし。2、3日中には言おうと思ってますけどね。内角球を意識しすぎるな、ということでしょう。やはり、そこは戸惑うかもしれませんから」

新加入の外国人選手に対する他球団からの「内角攻め」は必ず起こる出来事だ。暑くなる、雨が降るといった予報も当たる昨今、最初から分かりきったことに対する対応はうまくやってほしいと願う。もちろん克服できるかどうかは本人の技量に関わる部分なのだが…。(敬称略)

満塁本塁打を放った元阪神ロサリオ(2018年8月7日撮影)
満塁本塁打を放った元阪神ロサリオ(2018年8月7日撮影)