15年ぶりに宜野座で行われたTC戦は新指揮官・矢野燿大率いる阪神が5-0で快勝した。午後から雨の予報だったがスッキリと晴れ渡った真夏のような空になった。その下で昨季優勝と最下位の差がついた相手に19年初対戦で勝った。

現在はどこも戦力を試している時期だ。スタメンで主力選手が出てもすぐに交代していくし、正直、勝敗はあまり関係がない。それでも負けるよりはいい。何より勝つことにこだわっていく姿勢が今季の阪神には必要だ。

「そんなもん、オープン戦だろうが何だろうが全部勝ちにいかないかんやろ! 当たり前やないか! 勝ちグセをつけないかん!」

そんな話をしたのは阪神のキャンプをこの宜野座に持ってきた星野仙一だった。「勝ちグセ」。「勝ちたいんや」という超真っすぐなキャッチフレーズで戦った指揮官はその言葉も大事にした。

よく言われるように勝つにはチーム内の競争が必要でもある。特に移行期にあるチームはそうだろう。もちろん阪神も。その意味でこの日の練習試合、少しいいものを見た気がしたのは9回だった。

特別ルールなので勝っている阪神、9回裏も攻撃。広島の投手は左腕フランスアだ。昨季途中で育成契約から支配下登録されると「こんなのがいたのか」と他球団をあぜんとさせる投球を披露。カープの3連覇に大きく貢献した。

そのフランスアから島田海吏が四球を選んだ。途中出場でこの試合、これが初打席。島田はあの赤星憲広が着けた背番号「53」を背負う男だ。盗塁を狙うがフランスアもマーク。素早いけん制球を3度も投じた。結局、ワンバウンドになったバッテリーミスで島田は二塁を陥れた。

島田 絶対に走ってやろうと思っていたのであんな形で二塁に行って「あ~」と思った。まだまだです。赤星さんなら初球で走ってましたね。

外国人投手は初球の入りが甘いというか、割と簡単に投げるのが一般的なパターン。そこを持ち出し、島田は反省した。それでも相手のミスですかさず走ったプレーにはなかなかの緊張感があった。

ドラフト1位で入団した近本光司と似たタイプ。近本だけでなく快足選手は他にもいる。昨季、ファームでチーム最多の26盗塁をマークした島田も2軍でばかり走っていても仕方がない。

「まあ普通のプレーですけどね。でもナイスプレーでもあります」。島田について矢野は話した。目立たなくても細かいところで繰り広げられる競争がチーム力を上げると期待したい。(敬称略)