夏への宿題を胸に、甲子園を去った。第89回選抜高校野球大会に出場した日大三(東京)は優勝候補の履正社(大阪)相手に接戦を展開したが、同点の9回に7点を奪われ、力尽きた。エース桜井周斗投手(3年)は13奪三振をマークするも、スタミナ不足を自覚。4番の「デカプリオ」こと金成麗生内野手(3年)は、勝負強さを夏への強化ポイントに挙げた。

 この春はエース桜井、主砲の金成が大きな注目を浴びたが、2人に匹敵すると言われた男もまた、悔しさを味わった。「1番・三塁」で出場した井上大成内野手(3年)。昨秋はチームトップの4本塁打をマークし、打率4割1分7厘で強力打線をけん引した。高校野球関係者の間では「注目すべきは井上」とも言われたが、結果は4打数1安打。2得点したが、同点に追いついた後の8回1死三塁での三振を悔やんだ。

 井上 甲子園は1球で展開、流れが変わる。チャンスで1本が出なくて、自分の甘さが出た。(履正社は)ブンブン振ってくるバッターもいれば、しつこいタイプのバッターもいた。打線の厚みがすごかった。

 試合後、悔しさをにじませながらも、言葉は強く、目も鋭かった。「夏に向けて、この場所に戻ってこられるように、死にものぐるいでやります」と夏への糧とすることを誓った。

 10年の第82回選抜高校野球大会、日大三対興南(沖縄)の決勝をスタンドで観戦し、日大三高への憧れを抱いた。11年夏の甲子園では優勝したシーンをテレビで見て「日大三に行って、甲子園に行きたい」と思いを強くした。参考にする打者は、高校の先輩でもある阪神高山。「率を残しながら、1発も打てる。僕も広角に打てる打者になりたいです」と冬は逆方向への打撃を磨いた。

 夏はその11年以来となる甲子園優勝に向け、西東京大会で「打倒早実」を掲げる。「冬の合宿期間中は、早実に負けた悔しさをかみしめながら、練習した」と井上。「甲子園での経験を生かさないといけないです」と走攻守3拍子そろったキーマンは、夏の雪辱を誓った。【久保賢吾】