「兄を超える」という誓いを果たした。

 第89回選抜高校野球大会は23日、1回戦が行われ、23年ぶりの出場となった高田商(奈良)は昨年春夏ベスト4の秀岳館に11-1で敗れた。

 高田商のエース古川響輝投手(3年)はポーカーフェースで8回を投げきったが、胸の内には強い思いがあった。

 古川の兄貴哉さん(23)も高田商野球部出身。甲子園には届かなかったが、好選手のそろったチームで投手としてプレーしていた。兄に習い高田商への進学を希望したが、同じ学校では兄と比べられるのではないかと家族は心配した。

 「兄貴を超えたい」。古川は力強くはっきりと宣言した。いつもは口数が多い方ではなく、主張をするタイプではない古川の宣言に家族は驚いた。高田商に入学してからは、弱音を吐くことなく練習を続け、球速は入学時から15キロ上がった。

 エースとしてたどり着いた甲子園。8回で12安打11失点(自責は5)。5回の大量失点には自らの失策も絡み、満塁本塁打も浴びた。「初回にうまく入れたので何とかいきたかったですが、力みがあったのかもしれません」と初めての聖地には苦い思いが残った。それでも、4回まで1失点で粘るなど見せ場は作った。

 兄の貴哉さんは就職後も野球を続け、今は「マスターズ甲子園」で聖地を目指しているという。兄を超えて、兄より先に、甲子園のマウンドに立った。【磯綾乃】