いつもの愛くるしい笑顔はなかった。作新学院・大関秀太郎投手(3年)の目は、潤んでいた。27日に行われた2回戦の秀岳館(熊本)戦。8回3失点と好投しながら、あと1点及ばなかった。「甘く入ったところを狙われた。(相手打線に)威圧感があった」。1回戦のヒーローインタビューから一転、敗戦投手で上がったお立ち台で涙を流した。

 大関 甲子園は特別な場所。また、戻って来られるように練習します。

 壁が訪れる度、人一倍の負けん気の強さではね返してきた。昨夏、チームは西武今井らを擁して日本一を達成。県大会ではベンチ入りしたが、大関はボールボーイで優勝の瞬間を迎えた。今井からは「来年いけよ」と言われ、「自分たちの代でも、絶対に帰ってくるぞと思った」。昨秋、関東大会を3試合連続完投勝利で制し、出場を決めた。

 昨夏の甲子園期間中は連日、メンバー相手の打撃投手を1時間近く続け、本気で勝負した。本来は打たせるのが役割だが、「たまに抜いたり、内角に投げたり。日本一の打線なんで反応を見たり、時には抑えるつもりで」腕を振って、技術を磨いた。練習後には1人で宿舎近くの河川敷で自主練習。悔しさを糧に、秋への結果につなげた。

 身長172センチ、体重70キロの小柄な体型、負けず嫌いな一面に、大胆な投球…。見れば見るほど、あの男の姿とかぶる。巨人の4年目左腕・田口麗斗投手(21)。彼もまた、悔しさを糧にはい上がった男だった。高校時代は瀬戸内・山岡(オリックス)と決勝で投げ合って、引き分け再試合の末に敗戦。プロ入り後も、2年目の2軍の開幕投手を同期の平良に奪われた。

 田口も自らを「負けず嫌いな性格」と評する。球速は130キロ台でも、右足を上げた後に左足のかかとを上げるヒールアップの時間を工夫。タイミングを狂わせ、130キロ台の真っすぐで相手をねじ伏せる。「いかに相手に自分のバッティングをさせないか」。内からあふれる闘争心も、武器である。

 今夏、作新学院は夏の栃木県大会の7連覇がかかる。大関は「絶対に達成したい。自分たちの代で止めるわけにはいきません」と意気込む。好きな言葉は、元広島の黒田博樹氏が座右の銘とする「耐雪梅花麗」。「『苦しまずして、栄光なし』という意味だと聞いて、いい言葉だなと」。この春の苦しみを夏への歓喜に変える。

 「アンパンマン」と呼ばれた小学6年時は身長150センチ、体重60キロの“関取”体形だった。小針崇宏監督(33)からは「“大関”から“横綱”になれ」と大きく期待される。「普通の球場では味わえない感覚だった」甲子園に、大関は成長した姿で戻ってくることを誓った。【久保賢吾】