プロでも、高校でも、偉大な記録や衝撃的なプレーが起きた時、それが「初なのか」、または「誰以来、いつ以来」なのかが話題に挙がる。プロでは9日の阪神戦で巨人菅野智之投手(27)が4試合連続完封に挑んだ時、65年に4試合連続完封を達成した「エースのジョー」こと、元巨人の城之内邦雄氏(77)にスポットライトが当たった。

 13日に行われた早実対八代戦(県営八代野球場)でも、清宮幸太郎内野手(3年)の場外弾が、歴史を振り返らせた。八代戦の1回無死一、二塁、清宮が放った強烈な打球は、右中間への推定135メートルで場外に消えた。スタンドで視察した阪神畑山チーフスカウトも「高校生では見られない打球」と絶賛した特大の1発だった。

 清宮の場外弾はもはや普通だが、ボールを回収した野球部員の一言が取材の発端だった。「(プロの)2軍の試合も何度か見に来たことがありますが、この球場で場外は見たことないです」。すぐに、球場関係者にも確認したが「記憶にないですねぇ」と同じ答えだった。これで「史上初」を確定させるのは早すぎるが、偶然にも、この日のスタンドには答えを知る可能性のある人物がいた。

 熊本出身で九州学院卒の西武高山スカウトだ。高校時代に通算43本塁打をマーク。プロでも11年に2ケタ本塁打を放った男なら、県営八代野球場での場外弾の経験があるのではと思ったが、高山氏自身も場外弾の経験はなく、他の人が打ったことを聞いたこともなかった。

 「熊本」「スラッガー」のキーワードを頭の中で巡らせた。すると、08年の巨人担当時代に取材した男の顔が浮かんだ。熊本工卒で、高校通算61本塁打の山本光将氏(32)だった。右投げ右打ちで、高校時代には「九州のカブレラ」との異名を持ち、「飛距離は規格外だった」と当時の同級生から聞いたことを思い出した。

 山本氏に連絡し「八代野球場で場外本塁打を打ったことはありますか?」と聞いた。山本氏は「あるばい。藤崎台球場でもあるばい」と笑った。「でも、清宮君は右中間でしょ? それは本当にすごいです。自分とは比べもんにならんよ」と恐縮した。山本氏は現在、地元の熊本で子供たちに野球を教えている。清宮より先に場外弾を放った男は、「清宮級」の大砲育成に全力を注ぐ。【久保賢吾】