秋春日本一を狙う日体大が10日、神奈川・横浜市内の同大グラウンドで始動した。昨秋の明治神宮大会を制し、6月の全日本大学選手権で08年東洋大以来5校目の秋春全国制覇を狙う同大の最速150キロ右腕・松本航投手(3年=明石商)は、今秋ドラフトの上位候補だ。低めに伸びる直球は数字以上の切れがある。直球が来ると分かっていてもバットは空を切る。下級生から活躍し、首都大学リーグ通算22勝を挙げるエースには、こんな“秘密”がある。

 松本は、関節が人一倍柔らかいのだ。見れば誰しもが目を丸くする。人さし指と中指を割ると、人さし指は親指へ、中指は薬指へどんどん近づいていく。開きすぎるほど、開く。今度は、指を有り得ない方にグイッと曲げてみせた。「関節が柔らかいんです。外れるというか…」。トレーナーからは筋肉の柔らかさもほめられる。「骨折もないし、肩とか肘も痛くなったことがないです」と、自分の体に感謝する日々だ。

 ラストイヤーは主将として挑む。例年は4年生から意見を募るが、今年は古城監督がスタッフらと相談して決めた。指揮官は「松本は実績もあるし取り組みもしっかりしている。投手ということで、姿で引っ張っていける。投手キャプテンは37年前に明治神宮大会を優勝した時の投手、白武さん(現広島スカウト部長)以来だと思います」と理由を語った。

 始動日にはDeNA、ヤクルトなどが視察に訪れ、グラウンドはにぎわった。主将自ら掲げたスローガンは「飛翔(ひしょう)」だ。「お正月に地元に帰ったら、期待してくれる人がたくさんいた。より、プロに行きたいという気持ちが強くなりました。大学で野球は終わりじゃない。今後成長するための過程として、もっともっと強い体を作りたい」。くねっと曲がる柔らかい指とは正反対の、強固な決意をにじませた。【和田美保】

日体大・松本の関節は脅威の柔らかさ(撮影・和田美保)
日体大・松本の関節は脅威の柔らかさ(撮影・和田美保)