花咲徳栄の中軸、左から橋本吏、韮沢、井上、羽佐田(撮影・金子真仁)
花咲徳栄の中軸、左から橋本吏、韮沢、井上、羽佐田(撮影・金子真仁)

夏の甲子園が真っ盛りだ。49代表校中トップの地方大会チーム打率4割3分2厘を誇る花咲徳栄(埼玉)は11日、初戦を迎える。

相手は、150キロ近い速球の右腕・中森俊介投手(2年)を擁するセンバツ4強の明石商(兵庫)。1回戦屈指の好カードに、組み合わせ抽選会でも大きなどよめきが起きた。

花咲徳栄の打線は、もともと評判が高かった。17年全国優勝時に話題になったハンマートレーニングに加え、冬には地下足袋を履き、重さ1・2キロのバットで約15メートルの距離からの速球を打ち込んだ。昨年末には、岩井隆監督(49)も「年末時点での話だけれど」と慎重に前置きしながら「打者の仕上がりは2年前のチームより上かもしれない」と言うほどだった。

普通の金属バットとスパイクに戻った3月、岩井監督も「すごい…」と絶句するほど、各選手の打球がさらに進化した。興味がわいた。1年間で、一体どれほど打つのだろう。

スコアブックを見せてもらえることになった。エクセルシートにひたすら打ち込んだ、昨秋以降の全対外試合132試合の記録。全国クラスの強豪勢とも対戦がある中、仰天の数字が次々と画面に現れた。

◆1番左翼・池田悠真(3年・左打ち) もうすぐ200安打、すでに100打点超。盗塁もチーム2位

◆2番中堅・橋本吏功(3年・右打ち) 220安打超で打率4割5分弱、三塁打22本、盗塁70超、長打率7割6分3厘

◆3番遊撃・韮沢雄也(3年・左打ち) 469打数で三振は29、併殺打は5のみ

◆4番右翼・井上朋也(2年・右打ち) 220安打超で200打点超、長打率6割8分3厘

◆5番二塁・羽佐田光希(3年・右打ち) 500打数で間もなく200安打、四死球120超

◆6番一塁・中井大我(2年・左打ち) 103試合出場で94打点

◆7番三塁・田村大哉(2年・左打ち) 長打率5割6分、埼玉大会打率6割6分7厘

◆9番捕手・菅原謙伸(3年・右打ち) 9番打者ながら100打点超

野手8人とも出塁率が4割超で、年間総得点は1380点(1試合平均得点10・45)。チーム打率は3割5分8厘。2ケタ得点や2ケタ安打は珍しくなく、20得点以上は11試合、20安打以上も14試合(練習試合はコールドがない場合がほとんど)で記録している。

中森ら明石商投手陣は、この強力打線の真価を問うにはこの上ない相手だ。「構えていて勝てる相手じゃない。とにかく攻め続けたい」と岩井監督は話す。「打線は水物」で終わるか、高い壁を越えるか。5年連続出場中。校歌の歌詞にある「夏の花咲徳栄」が今年も満開になるか。注目の一戦だ。【金子真仁】