19日の第4試合、仙台育英対大阪桐蔭は、仙台育英が春夏連覇を狙う王者・大阪桐蔭を9回逆転サヨナラで下しました。

 この試合を、仙台育英のOBが観戦に訪れていました。

 ちょうど10年前、89回大会に出場した、仙台育英の主将・武子仁大君、鹿間哲平君、一丸翔巨君です。

 「最後まであきらめない姿は、仙台育英の野球! 後輩たちが引き継いでいる姿を見て、感動しました!」と試合後、鹿間君が話してくれました。

 89回大会では、エース由規投手(現ヤクルト)を擁し、2回戦、智弁学園に2対5で敗退も、0対5で迎えた9回表には2点を挙げ、粘り強い野球を見せてくれました。

 「粘って得点する場面では、10年前を思い出しました」と武子君も懐かしそう。

 でも…実は…、「9回裏、2死でショートゴロを打ったとき、アルプスではみんな、あぁ~終わった~って崩れ落ちていたんです(笑)。でも、後輩たちはあきらめていなかった! それを見て、何か、最近の生活で忘れていた何かを思い出させてくれたような気がします」と、一丸君が胸の内を明かしてくれました。

 大学を卒業して、社会に出て6年。それぞれの環境にも慣れ始め、毎日をただ何となく過ごしていた自分がいたのかもしれません。

 武子君「10年前の自分を思い出しました。何事にも必死だったなぁって。もちろん、今も毎日一生懸命仕事には取り組んでいますが、今日の後輩たちから、自分の中の熱い思いを呼び起こしてもらったような気がします」

 鹿間君「最後まであきらめない。それは仕事や人間関係も同じ。明日から、新たな気持ちで取り組んでいきたいですね」

 一丸君「日常では、1から物事を築いていくのが面倒臭くなって簡単にあきらめてしまうこともあるんですよね。でも、そこであきらめずにやることが大切だと気付かされました」

 選手たちだけじゃない。見ている者にとっても、それぞれの熱い思いを呼び起こしてくれた試合だったんですね。

 そして、10年前を思い出しながら、武子君がこう話してくれました。

 「こうして甲子園に来ると、由規が甲子園最速記録の155キロを投げて甲子園球場が大歓声に包まれたのを思い出します。負けはしたけど、甲子園はこうやって帰ってこられる場所なんだなぁと、感じます」(武子君)

 -帰ってこられる場所-

 甲子園を経験した高校球児にとって、甲子園は「聖地」でもあるとともに、「故郷」でもある。

 仙台育英のOB、武子君、鹿間君、一丸君の、生き生きとした表情を見ていて、ふと、そんなことを感じました。