セナは仙台育英のエース佐藤世那(3年)だけじゃない! 第87回選抜高校野球大会(21日から12日間、甲子園)の注目選手を紹介する「男気!!甲子園」最終回は、昨夏甲子園8強の高崎健康福祉大高崎(群馬)のドラフト候補、柘植世那捕手(3年)だ。甲子園で快足をアピールしてロッテ入りした同校OB脇本のように、柘植も強肩ぶりを見せつけてチャンスをつかむつもりだ。

 柘植が、甲子園での目標をはっきりと口にした。

 「自分も脇本さんを目指していきたいです。優勝はもちろんですが、甲子園でアピールしたいです」

 甲子園で“就職活動”したい。機動力野球を打ち出し「機動破壊」をモットーとする高崎健康福祉大高崎は、昨夏の甲子園で大会タイ記録にあと3個に迫る4試合26盗塁を決めた。うち、脇本は6盗塁し評価が急上昇した。偶然にも今大会は同じ「世那」の名で、ドラフト候補に挙がる仙台育英・佐藤世が注目を浴びる。名前の意識はないが、対戦することになれば「打ちたいですね」ときっぱり。優勝候補校のエースを打てば絶好のアピールになる。

 ひそかな闘志を燃やす柘植の売りは、もちろん「肩」だ。「自分では特に速いと思わないですが、秋の群馬大会では盗塁されませんでした」。遠投は115メートル。捕ってから二塁到達までは1・84秒だ。プロでも2秒で合格といわれるだけに「甲子園では盗塁を許しません」と、言うのもうなずける。

 体重は昨夏から6キロ増の78キロ。「毎日、夜は1キロぐらいお米を食べるようにしました」と、チーム全体で取り組んだ「体のトータルコーディネート計画」も積極的に引っ張った。ベンチプレスは82キロから92キロまで上げられるようになった。

 兵庫入り後の練習試合では2日連続で本塁打を放った。パワーアップの成果が表れ、打撃の調子も上がっている。そして、そんな姿を見てほしい人がプロのスカウト以外にもいる。「甲子園に入ってから、本当にいろいろな方に応援されていることを感じます。感謝の気持ちを持って戦いたいです」。女手一つで育ててくれた母真紀さんへの思いも込め、夢の実現へ向けて突き進む。【和田美保】(おわり)

 ◆柘植世那(つげ・せな)1997年(平9)6月3日、群馬・高崎市生まれ。小1で野球を始め、谷中中では藤岡ボーイズに所属し3年春に全国大会8強。高崎健康福祉大高崎では1年夏からベンチ入り。昨夏の甲子園では5番に座り4試合で8安打を放った。高校通算17本塁打。好きなプロ野球選手は楽天嶋。50メートル走6秒8。176センチ、78キロ。右投げ右打ち。家族は母と姉、弟。