「花火打線」の強さと粘りを全国に証明した。春夏通じて初出場の大曲工(秋田)は、関東王者・浦和学院(埼玉)に逆転負けし、06年秋田商以来、県勢9年ぶりの8強入りを逃した。初回に2番赤川駿内野手(3年)の本塁打で先制し、1回戦に続く10安打をマーク。自慢の打撃で初陣1勝を飾るなど、大きな足跡を残した。

 地元名物にちなんだ大曲工「花火打線」は、簡単には終わらなかった。後がない4点差の9回2死。8番守沢康陽(2年)、代打小田嶋康太(3年)が連打で出塁。粘って2試合連続の2桁10安打に乗せた。浦和学院の8安打を上回った。

 2試合計5安打の1番佐々木駿一(3年)が堂々と言い切った。「チームとしてバッティングは全国で通用する。粘り強さも出せた」。初回に先制の公式戦初本塁打を左越えに運んだ赤川も「スイングは浦和学院に負けていなかった」と胸を張った。初陣8強入りに届かなかった。それでも自慢の打撃に自信を深めた。

 就任19年目の阿部大樹監督(44)は4、5年前まで「守り勝つ野球を目指していた」と明かした。夏の秋田大会は何度も優勝候補に挙がりながら、打撃の力不足が響き甲子園を逃し続けたという。「何かを変えたい思いで」と打撃重視にシフトチェンジ。ボールまでの距離を大きく取り、体を開かずに打つ練習を繰り返した。巨人阿部も採り入れる「ツイスト」と呼ばれる打法で、体幹をうまく使って打てば長打が期待できる。八戸学院光星(青森)などが行う、投手と打者の距離を短くした打撃も参考にした。強豪校などから得た練習が「花火打線」の原点になった。

 昨秋12-11で勝った浦和学院との強化試合で「体格の差を感じた」と赤川。それ以降は、全員が1日3キロの白米を食べ切る食事トレーニングにも励んだ。ほとんどの選手がこの春は5キロ以上体重を増やした。1点を取るしつこさや駆け引きなどに課題を残したが、阿部監督は「鍛錬を積めば、十分に戦えるという実感をつかみました」と言った。

 秋田の県南校として初めて甲子園で勝利した。1回戦と同じ先発9人は、2試合で全員が安打を放った。赤川は「また、ここでもう1度やりたい」。花火がよく似合う夏へ、大曲工の新たな挑戦がスタートする。【久野朗】