静岡が無念のサヨナラ負けを喫した。敦賀気比(福井)に敗れ、28年以来となる4強入りはならなかった。2回を終えて0-3とリードを許した3回から村松遼太朗(3年)が好救援。5回に3点を奪い1度は振り出しに戻したが、9回2死一、二塁からサヨナラ打を浴びた。敗れはしたものの、強打者がそろう相手に5安打の好投。このセンバツ8強の経験を夏に生かし、再び甲子園に帰ってくることを誓った。

 静岡のマウンドを守った村松の目は赤かった。「すごく悔しい。スライダーが甘く入った。悔いが残る」。スライダーから直球という組み立てを考えていたが、好調の3番打者にはじき返された。

 3-3の7回表には1死三塁で打席へ。スクイズを試みるが外の直球に空振りで三塁走者がアウト。勝ち越し点を取れなかっただけに「7回で取れていれば余裕があったかも。抑えないといけないという力みから高くなってしまった」と振り返った。

 中1日でエース村木文哉(2年)が先発したが、初回に2点本塁打を浴び、2回にも1失点し3回から村松がマウンドへ。試合開始と同時にブルペンに詰めていた村松は「村木には、任せろと話した。雨が降っていたけど甲子園のマウンドは投げやすかった」と初めての大舞台に臨んだ。そして「4強に入ってもう1度、村木をマウンドに立たせてやりたかった」と後輩エースへの気遣いも見せた。

 これまで公式戦の登板は2試合のみ。昨春の県大会での先発5回途中までと、昨秋東海大会決勝の9回からの4イニング。5イニング以上は投げたことがなかった。中学時代は息子に厳しかったという父の宏明さん(46)は「私の思っているはるか上に行った。何も言うことはないです」とマウンドを守る息子の姿に声援を送っていた。

 村松は「7イニングで1失点はいいけど、負けたので悔いが残る」と小学校の時以来という敗北の涙をぬぐった。試合前には「度胸の良さを見せたい」と話してはいたが「初戦でもマウンド度胸を見せられたかな」と及第点を与えた。

 今日からは夏を目指す戦いになる。村松は「(背番号)1番をつけて甲子園で投げたい。敦賀気比とやって借りを返したい」と新しい目標を定めた。【加納慎也】