敦賀気比(福井)が春夏通じて北陸勢悲願の初優勝を手にした。

 春の頂点へ敦賀気比・平沼翔太(3年)の右腕が、うなりをあげた。9回表、138キロ速球、鋭いスライダー。2死二塁で東海大四の3番山本を投ゴロに仕留めた。一塁へ右手で下から送球し優勝をもぎとった。それでも平沼は「9回も全力ではありませんでした」と言う。試合が完了するまで、力を残した。これが昨秋から春への成長、さらに夏へつなぐ力配分だった。

 今大会5試合すべて完投した。防御率は0・40。しかし、決勝戦はピンチの連続。毎回走者を出し、8回は絶体絶命だった。無死二、三塁で打者は相手エースの大沢。2球目に「嘉門(捕手)が立ち上がってくれたので」と速球でスクイズを外した。三塁走者をアウトにし、次に大沢から三振を奪い、この回最後は一塁右横の難しい打球を上田が好捕し救ってくれた。その裏、2日連続で松本のホームランが飛び出した。

 福井県内のヤングリーグ「オールスター福井」で元阪神の小林繁氏(10年に急逝)から指導を受けた。平沼は「小林さんは、優勝旗を持ってきてほしいと言っていました。いい報告ができます」。日本一で「追われる立場になった。死にものぐるいで頑張ってまた優勝したい」と、平沼の心に早くも火が付いた。【宇佐見英治】

 ◆エース兼4番のV 平沼は全試合4番を打った。センバツでエース兼4番が優勝したのは98年松坂大輔(横浜)以来。松坂は決勝を含む5試合中3試合が4番で、全試合ともエース兼4番のVは92年三沢興一(帝京)以来。

 ◆防御率0点台でV 敦賀気比・平沼の今大会防御率は0・40。金属バット採用後(春は75年から)、センバツ優勝投手では83年水野雄仁(池田=防御率0・00)81年西川佳明(PL学園=同0・20)09年今村猛(清峰=同0・204)に次ぐ4位。

 ◆オール完投V 平沼は全5試合を1人で投げた。センバツのオール完投Vは02年大谷智久(報徳学園)以来13年ぶり。