東海大相模(神奈川)のドラフト候補・吉田凌投手(3年)が「脱・スピード」で4強入りに導いた。作新学院(栃木)の強力打線に8安打を浴びながらも、145球8奪三振1失点で完投した。

 最速151キロ右腕が、勝負に徹した。吉田のこの日の最速は、ロッテのスピードガンで143キロ。走者を背負いながらも直球でコーナーを突き、1失点で踏ん張った。10日の延岡学園(宮崎)との招待試合で、終盤に制球が乱れて打ち込まれた反省も生かして完投勝ち。スタンドに集結した10球団30人のスカウトに変身した姿を披露した。「打たれながらも最後まで粘り強く抑えられた。久々にいい投球ができた」。スカウト陣も「宮崎の時より数段良くなっている」と口をそろえた。

 ピンチで進化を証明した。2点リードの8回2死一、二塁。打席には4回にカーブを右翼席に運ばれた5番小林虎太郎(2年)を迎えた。カウント2-2から決め球に選んだのは、キレとコントロールを磨いてきた直球だった。昨夏の県大会で20三振を奪った伝家の宝刀・スライダーに頼らず、空振り三振を奪った。球速140キロ台前半でも完全に振り遅れさせた会心の1球に「目の色を変えて、気持ちを入れて投げた。ひと皮むけた気がする」と胸を張った。

 リリースポイントを修正した成果も出た。今春の県大会前から「ボール半個分くらい前にした」と微調整。「打者から見たら(ベース付近から)急に来る感覚になると思う」と手応えをつかんでいた。バッテリーを組んだ長倉蓮捕手(3年)も「直球の走りは最近で一番だった。勢いが戻ってきた」とうなずいた。

 スピードを追い求めて制球を乱し、四球を連発して崩れる姿はもうない。「上のレベルでは150キロを投げても打たれる。プロでは130キロ台後半で抑える投手がたくさんいる」と考えは変わった。吉田が見据えるのは、夏の全国制覇とその先だ。【鹿野雄太】