“大物食い”は任せろ! 第54回春季全道高校野球(25日開幕・札幌円山)の組み合わせ抽選会が20日、札幌市内で行われ、28年ぶり出場の天塩は、開幕試合の1回戦で名門・北海との対戦が決まった。3年生部員の半数5人が、今春のセンバツで準優勝した東海大四のエース大沢志意也(3年)と天塩中時代のチームメート。甲子園で躍動した盟友との対戦を夢見て、まずは49年ぶりの春1勝を目指す。

 選手宣誓の1番クジを引くと、ある意味“持ってる”天塩の宍戸円(まどか)主将(3年)は苦笑いを浮かべた。直前の組み合わせ抽選で、開幕試合を引き当てたばかり。しかも、相手は昨秋全道準Vで優勝候補の北海だ。名寄地区予選では、全3試合で先攻後攻を決めるじゃんけんに1度も勝てなかった。山崎進監督(31)は「こちらの期待の、ことごとく逆を行く」とあきれ顔だが、裏を返せば、強運を秘めているともいえる。

 天塩町で唯一の高校。日本海に面した人口約3300人の小さな町は今春、大いに沸いた。センバツで準優勝した東海大四のエース大沢が、同町の出身だったからだ。3年生部員の半数が、1学年1クラスの天塩中で、大沢とともに育った。宍戸主将も、その1人。今年の正月休みには、帰省中だった大沢の自主トレに付き合い、球を受け続けた。「小4からバッテリーを組んでいたけど、甲子園では今までの姿と違って、とても頼もしく感じた」。友の勇姿に刺激を受けた。

 名寄地区から初の甲子園出場が期待された昨春のセンバツでは、21世紀枠の推薦校に選ばれたものの落選。今年4月就任で前部長の山崎監督は「土地柄、少人数でしか野球をやってこなかったので、競争心が足りない」と、1球の重みを選手たちに説いてきた。今春の地区予選では、2試合で中盤以降に逆転勝ちと粘り強さが光る。「(大沢と)ぜひ対戦したい。まずは1勝を目指します」と宍戸主将。ともに勝ち進めば、準決勝で願いはかなう。【中島宙恵】

 ◆天塩町 道北の日本海側、天塩川河口に位置する。自然の恵みが豊富で、紀元前5000年ころから古代民族の生活の場となり、松前藩は海運の交易地としていた。明治以降は水産業、林業を中心に栄え、55年に人口1万人を超えたが14年は3324人まで減少している。