天国の亡き友に全道1勝をささげた。白樺学園が逆転勝利で2年連続の初戦突破を果たした。深川西に逆転を許し、1点差を追う8回、2死から1番川波俊也捕手(3年)の本塁打を皮切りに一挙3点で試合をひっくり返した。チームメートで昨年11月に事故死した渡部洸稀さん(当時2年)を悼むナインの思いが勝利を呼び寄せた。

 祈りが通じた。白樺学園が終盤に粘りを見せた。1点ビハインドの8回2死走者なし。川波の打球が中堅スタンドに吸い込まれ、同点。攻撃ののろしが上がった。四球を挟む3連打で2点を勝ち越し。4回以降、毎回得点圏に走者を置きながら点を奪えず苦戦したが、打破した。決勝点となる5点目の左前適時打を放った4番加藤隆舗(りゅうすけ)右翼手(3年)は「決めてやろうという気持ちだったのでうれしい」と達成感に満たされた。

 試合中、ベンチでは背番号2のユニホームが見守っていた。昨年11月、ナインが悲しみに暮れた。チームメートの渡部さんがアルバイトの農作業中に事故で亡くなった。昨秋の全道大会で記録員としてベンチ入りしていた仲間との突然の別れ。火葬の際、棺にはスコアブックを納めた。1カ月後、追悼の意を込めて名前を刻んだユニホームを製作した。生前、本人が着用していたサイズと同じLサイズだ。

 同じ捕手として切磋琢磨(せっさたくま)していた川波は「ピンチの時も『アイツがいるからどうにかなるかな』と思う」。天国から不思議なパワーをもらっている気がした。生前、渡部さんが愛用していたブラシを受け継ぎ、グラブを手入れしている。

 日頃の練習は、必ず1分間の黙とうからスタートする。この日6回から救援し、無安打無失点で逆転を呼び込んだ中野祐一郎投手(3年)は小、中学とバッテリーを組んでいた。それだけに「ずっと球を受けてくれていた。アイツのために1戦1戦全力でやって、夏は甲子園に行く」。同じグラウンドでは野球ができなくなったが、渡部さんとともに戦い、目指すは4年ぶり夏甲子園。まずは昨年の春全道4強を超え、夏のステップにする。【保坂果那】