6年連続出場の北海が、釧路湖陵を下し、優勝した12年以来、春は3年ぶりの4強入りを決めた。エース渡辺幹理(かいり=3年)が8回1死まで無安打と快投。大会史上2人目のノーヒットノーランこそ逃したが、8回を1安打無失点、10奪三振で後輩右腕へつないだ。2連覇を狙う北照は、10-6で札幌日大との乱打戦を制し、3年連続で準決勝へ駒を進めた。

 歴史的な快挙まで、あと少し-。無安打無得点へ期待が高まる、8回1死だった。北海の渡辺幹が投じた95球目。「真ん中にスライダーが行ってしまった」という失投は、右前へはじき返された。「ああいう場面で甘いコースに行くのは、まだまだ。終盤はビシッと行かないと」。序盤はボールが先行したものの、最速142キロの直球に、スライダーやスプリットを散らして10奪三振。後輩の大西健斗投手(2年)とのシャットアウトリレーで、48年の学制改革以降、3季通じて道大会250勝目の歴史に花を添えた。

 高1の秋、初ベンチ入りでいきなり名門の背番号1を手にしたものの、相次ぐ故障に泣き、春と夏の大会での登板は今年が最初で最後となる。昨秋はエースで全道準優勝。右肩の炎症で調整が遅れた今春の札幌地区予選では背番号10に甘んじたが、好調を買われて再び背番号1に復帰した。

 道南の町、鹿部町出身で、駒大苫小牧のエース伊藤大海(ひろみ=3年)とは「幼稚園からずっと一緒」という幼なじみ。小中と同じチームでプレーし「高校では別のチームでやり合ってみたいと思っていた」と別々の道へ進んだ。「大海は何をやらせてもすごかったし、器用。でも、僕は不器用」と苦笑い。「刺激を受ける存在だし、春も夏も、戦ってみたい」と対戦を待ちわびる。

 昨秋の道大会決勝では、センバツで準優勝した東海大四に1点差で敗れ、涙をのんだ。「あの時の悔しさだけで十分」と、振り返ることは、決してない。あと1歩、届かなかった甲子園。「(道内で)一番悔しい思いをしているのは、自分たち。この悔しさを春と夏にぶつけるしかない。慎重に、でも大胆に投げたい」。涙のぶんだけたくましくなったエースが、チームを3年ぶりの春制覇へと導く。【中島宙恵】