最速149キロを誇る「高校NO・1左腕」の東海大相模(神奈川)小笠原慎之介投手(3年)が「背番号1」の誇りを懸け、ラストサマーに挑む。高校野球特集第1回は、日刊スポーツ記者が全校の有望選手にスポットを当てる「ピカイチ投手編」。小笠原は1年冬に左足首を痛めた影響で、昨年は満足のいく投球ができなかった。本来の調子を取り戻した今夏、7月16日の2回戦で足柄-岸根の勝者と連覇をかけた戦いに挑む。

 小笠原がやっと本来の姿を見せる時がきた。今春の関東大会準決勝、浦和学院戦で最速を3キロ上回る149キロを出し、評価は上がる一方だ。広島苑田スカウト統括部長は「空振りの取れる真っすぐが最大の魅力」と評価。打者の胸元を突く強気の投球も光る。昨夏の甲子園では2回戦の盛岡大付(岩手)戦で救援し、1回1/3を投げて3三振を奪い観衆をくぎ付けにした。

 それでも、道のりは平たんではなかった。1年春からベンチ入りし公式戦で登板したが、冬に左足首を負傷した。かばいながら投げたことで結局左肘まで痛めた。「焦ったしつらかったです。でも、今だからやれることもあると切り替えました」。走れないなら体幹を鍛えるトレーニングをする。風呂でのストレッチもたっぷり時間をかけ、腐らず未来だけを描いた。

 そんな姿を門馬敬治監督(45)も見ていた。リーダーシップも評価され、2年秋には「背番号1」を与えられた。期待にこたえるべく、この冬はダイエットに励み、一時88キロまで増えた体重を落とした。コロッケもメンチカツも衣をはいで食べ、大好物のフライドチキンもシュークリームも我慢した。「めちゃくちゃ走り込みました」と苦手な長距離走も積極的に取り組んだ。体重は6キロ減の82キロになった。夏に向け、息切れしない体を作り上げた。

 今では「高校NO・1左腕」として、昨夏の神奈川大会決勝で最多タイの20三振を奪った同期、吉田以上の評価を集めるまでになった。「吉田とは支え合いたい。でも、試合になればマウンドに立っている方がチームを引っ張るだけ。最後だし、どの高校よりも一番長く野球をやりたい」。昨夏よりひと回り小さくなった顔に決意がにじんだ。【和田美保】

 ◆小笠原慎之介(おがさわら・しんのすけ)1997年(平9)10月8日、神奈川・藤沢市生まれ。小1で野球を始め善行中では「湘南ボーイズ」に所属。中学3年夏にエースでジャイアンツカップ初優勝。東海大相模では1年春からベンチ入り。家族は両親と弟、妹。178センチ、82キロ。左投げ左打ち。