南北海道の函館地区代表決定戦で、知内が8回2死走者なしから3点差を追い付き、第1シードの古豪・函館工にサヨナラ勝ちした。延長12回2死一、二塁から、宮腰拓磨二塁手(3年)が、相手失策を誘う“決勝打”を放った。函館大有斗、函館ラサールとともに、19日開幕の南北海道大会(札幌円山)に出場し、夏は初めての甲子園切符を狙う。

 「いやぁ~、しびれました。感動しました」。これまで幾多の名勝負を経験した名将ですら、興奮せずにはいられない。今年4月に就任したばかりの知内・本間茂裕監督(60)は、終盤の劇的な展開に声を震わせた。

 0-3となり勝負あったかに見えた8回裏、ターニングポイントを逃さなかった。2死走者なしから、四球で水上優舞右翼手(3年)が出塁。続く羽沢愁平左翼手(3年)へ1球投げたところで、函館工のエース安田貴浩(3年)が右ふくらはぎをつって、治療のために試合が中断した。「マウンドに戻ってからの初球に、力がなかった。3点差なら、全然いけるぞと思った」と主将の羽沢。予感は的中し、四球を選んで得た一、二塁の絶好機で、宮腰から3連続適時打を放って一気に同点に追い付いた。

 組み合わせが決まった時から「安田攻略」を念頭に、打撃練習を行ってきた。昨秋の地区予選で函館工に敗れ、春先の練習試合では、安田のスライダーに全く歯が立たず完封負け。以来、2台のマシンをスライダーに設定して打ち込んできた。延長12回2死一、二塁。「意識的にバットを短く持ってミートを心がけた」と言う宮腰の強烈な打球は、二塁手のグラブをはじく殊勲の“サヨナラ打”に。相手エースに対する執念が大一番で実った。

 93年センバツ出場校も、夏は、甲子園出場がない。南北海道大会では、97年の4強入りが最高で、3年ぶりに出場した昨年は初戦敗退。宮腰をはじめ、羽沢やエース越中谷澪次(3年)ら昨年からのメンバー6人が残り、今年は勝負の年となる。羽沢は「今日で、1つにまとまれた。道大会でも勝ち進んで、今年は絶対に甲子園へ行く」。勢いそのままに、2年連続、円山に乗り込む。【中島宙恵】