【2015白球メモリー:宮城広瀬・加藤礁万投手(3年)】

 「またなるのかな…」。0-6とされた6回、不安が一瞬頭をよぎった。新チームになった昨秋から公式戦は4戦すべてコールド負け。「絶対コールドにしない」。気持ちを切り替え、8回1死走者なしから右前打を放つと流れが変わった。押し出しで1点目のホームを踏み、その回だけで3点を返す。チーム全体でも相手の7安打を上まわる10安打。9回も走者を出すなど好ゲームを演じた。「最後まで出来た。負けはしたけど良かった」。9回を戦った充実感があった。

 先発し4回2/3、5失点で三塁守備にまわった。「自分がちゃんと引っ張っていれば勝てた試合」とエースの責任を果たせなかったことに涙した。昨秋大会後、野手から投手に転向。エース不在の状況で、自ら立候補した。冬場もボールを握り、雪でも長靴を履き、毎日100球以上投げ込んだ。

 宮城広瀬の公式戦最後の勝利は13年春の地区大会。相手は仙台で、勝ち投手は兄楓稀(現仙台大2年)だった。兄以来の白星はつかめなかったが「ピッチャーをやったことに悔いはない」と胸をはった。主将として、試合後応援してくれた人たちに、こうあいさつした。「僕たち3年生は1度も勝つことが出来ませんでしたが、最高の夏でした」。【高場泉穂】