今年2月から啓明学園で指揮を執る元ヤクルトの芦沢真矢監督(57)が、部員11人と挑んだ夏は初戦で幕を閉じた。部員不足で昨秋から出場辞退していたため、チーム1年ぶりの公式戦は5失策と13四死球9盗塁を許して7回コールド負け。「力の差は歴然としていたけど、一生懸命やってくれた」。昨夏8強の小平に、ビッグイニングを作らせなかった粘りをたたえた。

 長年の夢をかなえた。88年の現役引退後は国内外で監督、コーチを務めたが「ずっと高校野球の現場に戻りたかった」と言う。13年の学生野球資格回復制度導入で道が開き、会社員だった昨年11月に監督就任要請を受けた。2月から学校職員として、当時部員8人だった野球部の強化を任された。

 指導方針は「心はプロであれ」。打撃練習では革手袋を外させた。「マメをつぶせば、どれだけ練習したか実感できる」と、素手で振らせて練習量で自信をつけさせた。守備は全員が複数ポジションをこなせるよう、すべてのポジションでノックを受けさせた。次の目標は「(準々決勝以降の会場の)神宮で戦えるチームをつくる」。かつての“職場”に教え子と戻るため、芦沢監督の挑戦が始まった。【鹿野雄太】

 ◆芦沢真矢(あしざわ・しんや)本名・芦沢優(まさる)1958年(昭33)1月1日、山梨・若草町(現南アルプス市)生まれ。巨摩高では75年夏に4番捕手で甲子園出場。76年ドラフト5位でヤクルトに入団。88年の引退まで通算280試合で打率2割8厘、5本塁打。91年から広島、98年から台湾リーグ台中金剛でコーチを歴任。05年に四国IL香川の監督に就任し、06年に初優勝。07年はBCリーグ石川の運営部長。08年から同新潟で監督。11年は横浜1軍ブルペンコーチ、昨夏は日本航空高(山梨)で臨時コーチを務めた。178センチ、79キロ。家族は夫人と2女。血液型A。