主役の座は渡さない。全国高校野球選手権大会(8月6日開幕、甲子園)西東京大会で、ラグビー・ヤマハ発動機の清宮克幸監督(48)の長男、早実(西東京)清宮幸太郎内野手(1年)が、高校初の4安打と大暴れした。日野戦に「3番一塁」で先発出場し、2本の勝ち越し打を含む3打点。得点圏での3打席すべてで結果を出し、勝負強さを発揮した。チームはサヨナラ勝ちで8強入り。22日の準々決勝は八王子学園八王子と対戦する。

 清宮が、格の違いを見せつけた。初回、真ん中に入った変化球を中越えに運ぶ高校初の三塁打。6-6で迎えた8回の第5打席も、失投を逃さなかった。1度は勝ち越しの中越え適時二塁打で4安打3打点。「ここで打たなきゃ3番にいる意味がない。詰まったんで(スタンドには)入らないと思ったけど、ここって時に1本出てよかった」と納得の表情で振り返った。

 少ないチャンスを一撃で仕留めた。徹底した外角攻めに「自分が勝手に崩れた」という初戦はボール球にも反応していたが、全5打席とも際どいコースは自信を持って見送った。空振りも1度もなかった。「追い込まれても、ヤバイとは思わない」。16歳らしからぬ打席での威圧感が、相手投手の手元を狂わせた。

 怪物ルーキーは、劇的な幕切れも“演出”した。8、9回の守備で、右翼手からの返球を捕れずにそらすミスを繰り返した。いずれも右翼手に失策がついたが「カットプレーで2つ(ミスを)やって、迷惑をかけてしまった」と猛省。それでも、初のサヨナラ勝ちに「ずっとヒヤヒヤしてたけど、高校野球らしくて楽しかったです」と笑った。

 今大会3試合で打率7割。7打点。この日は三塁打、単打、二塁打とサイクル安打も狙える固め打ちだった。足りないものは、清宮自身が一番分かっている。前日に続いて自己採点を求められると「また、それですか?」と苦笑いしたが「今日のバッティングができて、ホームランを打てたら100点」と言い切った。

 大舞台になればなるほど輝くのが「スター」だ。この日は球場に約7000人の大観衆が詰めかけ、内野席は立ち見客が続出した。外野の芝生席も大部分が埋まり、13年の国体で森友哉(現西武)擁する大阪桐蔭が優勝した際の盛り上がりを超えた。22日の準々決勝以降は、舞台を神宮球場へ。今大会初めて強豪私立のエース左腕を相手に迎えるが「自分が打って、お客さんが盛り上がったら気持ちいい」。報道陣の「期待していいですか」との問いには「お願いします」と即答した。さらなる注目を浴びる中で、確実に近づいている夏初アーチをかける。【鹿野雄太】

 ◆OPS 出塁率+長打率で計算。1・0を超えると超一流とされる。日本プロ野球の通算最高OPSは王貞治(巨人)の1・080。10割超えは王だけで、規定打席以上のシーズン最高も74年王の1・295。大リーグの通算最高はベーブ・ルースの1・164。シーズン最高は04年バリー・ボンズの1・422。