仙台育英(宮城)のプロ注目エース佐藤世那(3年)が、前日とは別人の投球で2年ぶり25度目の甲子園出場へ導いた。全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)宮城大会決勝で、仙台育英が古川工に大勝。前日20日の準決勝は1死も取れずに降板したが、この日は8回10三振を奪い、打ってもダメ押しの満塁本塁打と投打にわたって活躍した。高校野球100周年の節目の年に初の白河関越えを目指す。

 「ほっとしているし、うれしい」。満足のピッチングで甲子園出場を決めた仙台育英エース「セナ」が、やっと笑った。

 右肘の故障と不調のため、今大会は準決勝まで登板は3戦6イニングのみ。代わりに背番号10の百目木(どめき)優貴(3年)が5戦24回4失点とチームを支えていた。先発し、1死も取れずマウンドを降りた前日20日の夜。家族と言葉少なに焼き肉を食べ、坂道ダッシュを繰り返し、午後8時には布団に入った。「これ以上迷惑をかけてしまったら、エースとしていられない」。先発を指名してくれた佐々木順一朗監督(55)と仲間に報いたい。すっきりとした表情で決勝の朝を迎えた。

 1回表、最初の打者を空振り三振に仕留める。これでスイッチが入った。力が程よく抜け、大きなテークバックから直球、フォーク、スライダーなどを使い分け、6回まで与えたヒットは2本。7回に1死満塁のピンチを迎えるが「気持ちだけで乗り切った」と2者連続三振に斬って取る。悩みを吹き飛ばすような8回5安打10奪三振の快投だった。

 5回裏には左翼席へ公式戦1号の満塁弾も飛び出した。「ピッチングに集中していたので…」と自分でもびっくりの“おまけ”付きで完全復活を遂げた。

 昨秋の神宮大会を制し、優勝候補として乗り込んだセンバツ。佐藤世は敦賀気比との2回戦で、たった1球の失投で決勝点を許した。あの悔しさが、ずっと心に残る。「気付いたら優勝していた、となればいい」。高校野球100周年の夏。悲願の白河大旗越えへ。復活のエースとともに仙台育英の大きな挑戦が再び始まる。【高場泉穂】

 ◆仙台育英 1905年(明38)創立の私立校。生徒数は2509人(女子902人)。野球部は30年創部で、部員110人(マネジャー2人)。駅伝は全国トップレベルでサッカー部、ラグビー部も強豪。主なOBにヤクルト由規ら。所在地は仙台市宮城野区宮城野2の4の1。加藤雄彦校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦12-1仙台

3回戦12-0大河原商

4回戦11-1志津川

準々決勝9-2仙台三

準決勝11-5石巻

決勝13-0古川工