早実の注目スラッガー・清宮幸太郎内野手(1年)が、甲子園出場に王手をかけた。全国高校野球選手権大会(8月6日開幕、甲子園)西東京大会準決勝に「3番一塁」で先発し、決勝二塁打を放って日大三を撃破した。父の清宮克幸氏(48=ラグビー・ヤマハ発動機監督)と母幸世さんがスタンドで見守る中、0-0の3回に右中間フェンス直撃の2点適時二塁打。今大会5試合連続安打で勝利に導いた。明日26日の決勝は、投打でプロ注目の勝俣翔貴投手(3年)を擁する東海大菅生と対戦する。

 清宮が、自らのバットで難敵を打ち砕いた。3回2死一、三塁、フルカウントからの7球目。「ここで1本出さないと苦しくなると思った。いいところに来てくれた」と真ん中外寄りの直球を捉えた。4打席19球のうち、唯一甘く入った球だった。4年ぶりの決勝に導き「日大三は最大のライバル。自分の1本で勝てた充実感はあります」と値千金の一打を喜んだ。

 大一番で見せた抜群の勝負強さは、プロのスカウトもうならせた。重圧がかかる場面で追い込まれても、ぎりぎりまでボールを呼び込み、大振りせずに一撃で仕留めた。日本ハム今成スカウトは「懐が深く、速いヘッドスピードで打ち返している。(バリー)ボンズみたいだ」。メジャー歴代最多762本塁打の大打者を例に出し、16歳の才能を絶賛した。

 感謝の思いを込めたひと振りだった。3回の打席に入る直前、三塁側スタンドに目をやり、笑みを浮かべた。視線の先には、父克幸氏の姿があった。ベンチで汗をふいた黄色いタオルは、早実初等部からの友人4人にプレゼントされたもの。「めざせ甲子園! KIYO K.S.H.M」の刺しゅうは、激励メッセージと4人の頭文字だ。初戦から愛用してきたタオルに「験がいい? ちょっとありますね」と照れた。支えてくれた家族や仲間を甲子園に連れていきたい一心で、ヒットを量産している。

 小さいことは気にしない。今春のデビューから37打席目で初三振を喫しても「ボール球なのに振っちゃった。修正したい」。一塁守備で2度、ゴロを前にこぼしても「ポロポロしましたけど、わざとなんで大丈夫です」と言ってのけた。

 憧れの聖地を、はっきりと視界にとらえた。立ちはだかるのは春夏連続出場を狙う東海大菅生。「野球を始めるきっかけになった甲子園に戻って、楽しく野球がしたい。絶対に勝つ」。清宮は、早実を5年ぶりの頂点に導くことしか考えていない。【鹿野雄太】