花巻東が激闘を制して、2年ぶり8度目の優勝を飾った。8-8の13回表1死二塁から、主将の7番佐藤唯斗内野手(3年)が中前に決勝打を放ち、一関学院に競り勝った。プロ注目のエース左腕高橋樹也(みきや=3年)の不調を、打線が粘ってカバー。今夏は接戦での強さを示した。

 マウンドに歓喜の輪ができた。野手が頼りがちだったエース高橋を取り囲むように…。「例年より力がないと分かっていた」(佐藤唯主将)花巻東が、延長の激闘を制して頂点に立った。佐々木洋監督(39)は「勝った後、自然と涙が出てきた」。岩手の名将を泣かすほど、この夏、粘り強くたくましくなった。

 延長13回表に決着をつけた。1死二塁。佐藤唯が2ストライクと追い込まれながら「食らい付くだけでした」と、3球目の外角のボール球を強引に中前打。8失点完投、190球を投げ抜いた高橋に報いた。

 接戦の強さが道を開いた。第2シードでもコールドゲームが1度もなく、大会6試合で2点差勝ちが2、1点差勝ちは2。苦しんで勝ち上がった。この日は延長で不利と言われる先攻。実際、サヨナラのピンチを2度招いたが、しのいだ。佐々木監督は「延長に入って守り切れた。プラス材料になったと思う」。

 監督の言う「プラス材料」とは東北大会だった。昨秋、東日本国際大昌平(福島)との2回戦、大曲工(秋田)との準々決勝と、延長15回引き分け再試合を2度戦い抜いた。今春は八戸学院光星(青森)に敗れた準決勝で、タイブレークまでもつれこんだ。佐藤唯は「その経験があって大きく成長できた」と話す。1球の重み、球際の強さ。選手の意識が強く変わった。

 それほど大量点を期待できず、勝ち切れない試合も多かったため、勝負どころでのヒット1本を重視してきた。3点を追う中盤は、好機を確実に生かして同点にした。延長ではチャンスを逃す一関学院とは対照的に、得点圏に初めて走者を置いた13回に勝ち越した。佐藤唯は「課題を克服して勝てた」と胸を張った。

 春先の練習試合では県内外の公立校に敗れ、佐々木監督が「監督になってから練習試合で一番負けた」と言うチームが、甲子園切符をつかんだ。05年から1年おきに優勝する「隔年Vの法則」も守った。菊池雄星(西武)大谷翔平(日本ハム)のようなスター不在でも、粘りと競り合いの強さがある。佐藤唯は「日本一が目標。1戦1戦を大事に戦っていきたい」と言った。これまでとはひと味違う花巻東が、「白河の関越え」に2年ぶりに挑む。【久野朗】

 ◆花巻東 1956年(昭31)創立の花巻商(のちに富士短大付花巻)と、57年創立の谷村学院が82年に統合した私立校。生徒数は613人(女子225人)。野球部創部は56年。部員135人。甲子園は春2度、夏は8度目の出場。主なOBは西武菊池雄星、日本ハム大谷翔平。所在地は岩手県花巻市松園町55の1。小田島順造校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦9-0大野

3回戦2-0盛岡中央

4回戦6-4盛岡市立

準々決勝3-2花巻農

準決勝6-1専大北上

決勝9-8一関学院