絶好の場面で、一番頼りになる男に打順が回ってきた。4回表2死一、二塁。1番打者の根来祥汰外野手(3年)は外角低めのまっすぐを逆らわず左中間へ。50メートル5秒9の俊足を飛ばし二塁に滑り込んだ。2走者を返し4-0と明石商を突き放した。

 「低い当たりでシャープに振り抜こうと思っていました。思い通りの当たりです」

 俊足好打。外野手で、スリムな体形で、ヒットメーカーとくれば、まさに「滝川二のイチロー」だ。試合前に山本真史監督(56)が「根来の出塁が、決勝のポイントです」と言っていたが、この日は4打数3安打2打点と期待通りの大暴れ。今大会8試合で通算32打数16安打の打率5割、8打点、8盗塁で見事なリードオフマンぶりをみせた。

 春の県大会中に、複数の選手たちのトランプ賭博が発覚して出場を辞退、高野連から厳重注意を受けた。この一件から野球への取り組みだけでなく、私生活も見直した。練習がない月曜日にミーティングを開いてあいさつなど日頃の行いを正していった。

 根来も主将の建畑亮太内野手(3年)も、そのミーティングを通じて学んだ「やらない後悔よりも、やって後悔しろ」という書道家の武田双雲の言葉が強く印象に残ったという。ミスを恐れない積極的なプレーがチームにも浸透し、甲子園につながった。

 「甲子園は、小学校の頃から憧れの場所でした。いい投手の平沼君のいる敦賀気比とやりたいです」。“滝川二のイチロー”が聖地でも積極プレーで大暴れを狙っている。【坂祐三】

 ◆根来祥汰(ねごろ・しょうた)1997年(平9)11月28日、兵庫県明石市生まれ。林小時代はソフトボール。衣川中では軟式野球でプレー。好きなプロ野球選手はDeNAの梶谷。174センチ、67キロ。50メートル5秒9。右投げ左打ち。血液型A。家族は両親と妹。

 ◆滝川二 1984年(昭59)創立の私立校。生徒数846人(女子393人)。野球部の創部は1984年で、部員数は67人。甲子園は春は3度、夏は今回が4度目の出場。主なOBはサッカーの岡崎慎司、金崎夢生、プロゴルファーの堀琴音ら。所在地は神戸市西区春日丘6の23。常陰則之校長。

◆Vへの足跡◆

1回戦9-2姫路商

2回戦7-0宝塚西

3回戦11-0琴丘

4回戦1-0東播工

5回戦1-0社

準々決勝9-3須磨翔風

準決勝2-1西脇

決勝8-2明石商