滝川二(兵庫)のスピードスター、根来祥汰外野手(3年)の夏が終わった。

 「自分には甲子園で盗塁を決めるという大きな目標がありました。甲子園でいいキャッチャーが大勢いる中で決めたかったんですが、甘くなかったです」。

 1回裏、いきなり見せ場はやってきた。先頭打者として左前安打で出塁。ベンチの山本真史監督を見た。ヒットエンドランのサインが出た。初球。2番大嶋がバントの構えからスイングしたが空振り。単独スチールではなくエンドランだったことで、根来のスタートもやや遅れた。それでも50メートル5秒9の俊足を飛ばし、二塁へ滑り込んだ。

 「一瞬、セーフかなとも思ったんですが。普通の盗塁と違って思い切ったスタートが切れませんでした。バットにボールが当たるところを見てから行ったんで。何とか大嶋にはバットに当ててほしかったんですが…」。

 判定はアウト。「セーフになっていればゲームの流れも変わっていたかなと」。先制のチャンスをつぶした滝川二は2回表に1点を先制されると中盤に失点を重ね、1-7で敗れた。

 根来の盗塁失敗をストップウオッチを使って検証してみた。(データ提供は都内でテレビ観戦のYさん)

 まず仙台育英・佐藤世のクイックモーション(始動してから捕手のミットに届くまで)が1秒18。

 次に郡司捕手の二塁送球タイム(捕球してから二塁到達まで)が2秒18。ベース上へのストライク送球だった。

 この合計タイムが3秒36になる。

 そして根来の二塁までのタイム(始動してから二塁到達まで)が3秒24だった。

 バッテリーの合計タイムを0秒12上回っている。にもかかわらず盗塁失敗したのは、やはりスタートが悪かったということだろう。

 根来は1回戦の中越(新潟)戦でも二盗失敗。結局、2試合で2度盗塁を試みて2度とも失敗。「甲子園で盗塁を決める」という目標は達成できなかった。

 それでも2試合で7打数4安打2四球と1番打者の役割は十分に果たした。初戦の中越戦では第1打席で二塁内野安打を放ったが一塁までの到達タイムは3秒87をマーク。関東第一(東東京)オコエ瑠偉(3年)と遜色ないスピードを披露しスタンドを沸かせた。

 祖父が高校時代に陸上選手だった。その血統を受け継いだのだろう。

 「おじいちゃんは足が速かったと聞いています。走り方を教わったことはありませんが。とにかく走ることでは負けたくない。陸上部の選手にも学校の体育テストで勝ったことがあります」と絶対の自信を持っている。

 今後はプロ志望届は出さず社会人野球に進む。

 「目標はDeNAの梶谷選手。リラックスした構えから最短距離でバットが出てくる。参考にしています」。

 社会人野球で足を生かした打撃と、勝負強さに磨きをかけたいという。3年後、どんな選手に成長しているか。根来祥汰。滝川二のスピードスターの名前を忘れないでおこう。