スーパー1年生は、やはり怪物だった。第97回全国高校野球選手権大会(甲子園)で、早実(西東京)の清宮幸太郎内野手(1年)が、待望の甲子園1号を放った。東海大甲府(山梨)との3回戦に「3番一塁」で先発し、3回の第2打席で右中間へ高校通算14本目となる勝ち越し2ラン。6回には2死満塁から走者一掃の適時二塁打、第5打席でも二塁打を放った。3安打5打点の大活躍で、日本ハム斎藤を擁して優勝した06年以来の8強入りに導いた。第12日(17日)の準々決勝では、今大会3本塁打の大砲・山本武白志(むさし)内野手(3年)擁する九州国際大付(福岡)と対戦する。

 甲子園の空に、清宮の打球が舞い上がった。3回無死一塁、甘く入ったチェンジアップをとらえた。「狙っていたし、今までの傾向から絶対に来ると思った。(投手の)握りも見えた。打った瞬間に入ったと思いました」。4万5000人の大歓声を浴びながら、聖地のダイヤモンドを1周した。「甲子園で打てたのがうれしい。今までのホームランとは全然違いますね。人生で類を見ないような、良いホームランでした」と満面の笑みを浮かべた。

 夢をかなえた喜びをかみしめた。西東京大会では6試合ノーアーチ。「甲子園に取っておきます」との宣言通り、聖地で夏1号を放った。「やっと出たって感じです。今までは、自分がここでライトスタンドに打球を飛ばすイメージをしていた。これからの人生においても、かけがえのない特別なものになると思います。最高です」。野球の道を目指すきっかけとなった06年夏以来の8強に導いた一撃を、満足そうに振り返った。

 “清宮節”は止まらない。6回には2死満塁で走者一掃の二塁打。「やっぱり(チャンスで)来たなと思った。打ったら勝手に打点がつくので、おいしいです」と上級生に感謝した。3安打5打点の大暴れには「(自己採点は)90点くらい。ここで満点を出しても、これがマックス(限界値)になるのは嫌なんで。自分はまだ、こんなもんじゃないです。もっと期待していただいて、応えていく」と言い切った。

 1年夏の本塁打数はPL学園(大阪)清原、大阪桐蔭・中田に並んだ。1大会7打点は、すでに2人のスラッガーを上回った。阪神金本が甲子園で放つ豪快なアーチにあこがれ、母幸世さん(48)の勧めもあって左打ちの強打者を目指した清宮は「ホームランバッターでありたいと思っています。そういうバッターじゃないと、おもしろくないですから」ときっぱり。記念のホームランボールは「家に飾るか、練習ボールになるか…。これから考えます」と笑った。非凡な才能を証明した甲子園での1発は、新たな怪物伝説の序章にすぎない。【鹿野雄太】