優勝候補に挙がる東海大相模(神奈川)が、遊学館(石川)に快勝し、準優勝した10年以来5年ぶりの8強を決めた。エース左腕の小笠原慎之介投手(3年)が初先発し、8回を6安打2失点、6奪三振と好投。球場表示の最速は前回を2キロ下回る149キロで、自己採点は「50点」と辛口だったが、打たせて取る投球で自身、甲子園初勝利を挙げた。

 8強に導いても、東海大相模・小笠原に笑顔はなかった。「勝ったので結果オーライですが、50点です」。試合後、お立ち台で聞かれた自己評価は及第点にも届かず、「1番をつけている限り、最少失点で抑えないといけない。恥ずかしい」。日本一を目指すからこそ、満足できなかった。

 直球で空振り三振を奪うスタイルの剛腕が、最後の夏に新しい扉を開けた。「ペース配分を考えながら打ち取ろうと思いました」。初回から最速147キロを計測。遊学館の3番広橋に中前へ運ばれたが、4番高本をスライダーで遊ゴロに打ち取った。安打や失策で3回まで毎回走者を出したが、三振を狙わずに打たせて取った。

 6回に連打を浴び、今夏の自責点ゼロは32回2/3でストップした。ここからギアを入れ替え、7回以降は自慢の直球で3つの空振り三振を奪った。ロッテのスカウトなどのスピードガンでは最速151キロを計測。打っても二塁打、三塁打の長打を放って全力疾走した。1打点を挙げ「たまたまです」と笑ったが、「優勝まではまだ遠い。1戦必勝です」とキッパリ。今夏の練習試合で大阪桐蔭のエース田中誠也投手(3年)と校名の入った互いのタオルを交換した。連覇の夢が絶たれた友人の分も、左腕を振る覚悟だ。

 午前中には「育成功労賞」の表彰式が行われ、昨年死去した東海大相模元監督の原貢氏(享年78)が表彰を受け、長男の巨人原辰徳監督(57)が記念の盾を受け取った。門馬敬治監督(45)は「選手には言ってなかったですが、本当に勝ちたかった。これが本音。小笠原は勝つ投球をしてくれました」。45年ぶりの日本一へ、これ以上ない弾みがついた。【和田美保】