怪物ルーキーが、来秋ドラフトの超目玉を打ち砕いた。第27回U18(18歳以下)ワールドカップ(28日~9月6日、甲子園ほか)に出場する高校日本代表の早実(西東京)清宮幸太郎内野手(1年)が、高校入学後初の「4番」で先発出場。大学日本代表の最速155キロ右腕、創価大・田中正義投手(3年)との初対決でいきなり中前適時打を放った。チームは大敗したが、木製バットでも振り負けない対応力と強心臓を見せた1年生スラッガーの存在感が際立った。

 「4番清宮」が、一塁ベース上でにやりと笑った。初回2死三塁。アマ球界NO・1の剛球を繰り出す創価大・田中から、チーム唯一となる適時打を放った。「打順を言われて、燃える思いがあった。4番は中心選手。流れを変えてやろうと思った」と、有言実行で堂々の代表デビューを飾った。

 田中との初対決を楽しんだ。初球の外角153キロに果敢にバットを出し、ファウルで対応した。2球目は151キロで内角をえぐられ、「考える暇がないくらい速かった」と驚きながらも、田中が投球動作を変えた3球目に瞬時に反応した。甘く入った148キロを力で中前へ運んだ。「(マウンドとの距離が近い)リトルリーグみたいだった。田中さんからヒットを打てたのはうれしいけど、(自己採点は)70点くらいですかね」と、周囲の想像をはるかに超える対応力を見せても、満足する様子はなかった。

 第2、第3打席でも力のある大学生の直球に対し、ストライクにはファウルで粘り、ボールは落ち着いて見送る。ともに四球を選び、選球眼の良さを示した。西谷監督が、清宮に対して「いいところで打順が巡る。4番がいいと思った」と打線の中心に据えた期待を裏切らなかった。

 実は、約3時間前にプレゼントされたばかりのバットで結果を出した。「いろいろな木製バットを試したい」との理由から、同じ都内のトレーニングジムに通う慶大・横尾に頼み、この日の試合前に手渡された。持参していたものより10グラム軽い、オールドヒッコリー社製のヘッド側が白い2色の920グラムに持ち替えると、フリー打撃で右翼スタンドにこの日唯一の柵越え。適時打の直後は、横尾に「いいぞ、いいぞ。バットいいだろ」と声をかけられたといい、「横尾さんにパワーをいただきました」と感謝した。

 すべてが刺激的だった。試合前には、中学時代に始球式を行った際に対面した楽天星野シニアアドバイザーと再会し、激励を受けた。試合では大学生のスピードとパワーを肌で感じた。明日28日からは海外の強豪との戦いに挑む。「これからも打線の中心を任されたい。結果で応えて世界一になりたい」。世界を目指す怪物スラッガー“清宮劇場”は、まだまだ続きそうだ。【鹿野雄太】

 ◆高校日本代表の4番 高校代表で臨んだ過去3度のU18W杯(04、12、13年)で、下級生が4番を打った例はない。下級生の野手で唯一選ばれた12年の森友哉(大阪桐蔭2年)は、1番打者で起用された。最近の大会での4番は12年が大谷翔平(花巻東3年)、13年は内田靖人(常総学院3年)が務めた。