みちのくから世界の世那へ-。第27回U18(18歳以下)ワールドカップ2次リーグ第1戦のカナダ戦に先発した仙台育英・佐藤世那投手(3年)が5安打13奪三振2失点で完投し決勝進出に王手をかけた。フォークボールを武器に大リーガーの卵から次々に三振を奪い、米国戦に続く完投勝利を飾った。また、大会終了後にはプロ志望届を提出することも明らかにし、世界一と夢の実現へひた走る。第2戦は甲子園球場に場所を移し韓国と対戦。勝てば1位が確定し6日の決勝へ進む。

 「日本を背負っているような気持ちで投げた」。その言葉にふさわしい気迫みなぎる投球で、佐藤が2戦連続完投を果たした。

 5安打完封した1次リーグ米国戦同様、直球とフォークを決め球に強打者から面白いように三振を奪っていった。マーリンズ1巡指名の4番ネイラーとの対戦では、4回に140キロの外角直球で見逃し三振、6回には133キロの内角を突くフォークで空振り三振。「フルスイングしてくれて楽しかった」。3打数無安打と仕事をさせなかった。

 試合開始が1時間50分遅れ調整が難しかったのもあり、序盤、直球が走らず制球が乱れた。2回には連続四球と暴投で1点を失った。だが試合中にブルペンで成田とキャッチボール。「上からたたきつけるような感じ」と直球の感覚を取り戻した。直球が走るからこそ、フォークが生きる。スライダーを3球投げたのみで、ほぼ直球とフォークだけで抑えきった。

 佐藤の好投を支える2つの思いがある。1つは悔しさだ。甲子園では準決勝までの5戦すべてに登板。東北勢初の日本一まであと1勝に迫ったが、決勝では東海大相模に6-10と完敗。「甲子園で目標の日本一を取れなかった分、やるからには世界一を目指したい」。リベンジを世界の舞台で果たそうとしている。

 もう1つはプロ入りへの思いだ。名門大学など多くのチームから誘いがあるが、「保険」をかけず、高卒でプロを目指すと決めた。この大会が終わればプロ志望届を提出する。現段階では指名される確証はない。それだけに多くの人が注目する今大会でアピールしたいという気持ちが「心のどこかにはある」と明かした。佐藤にとって、人生をかける戦いでもあるのだ。

 日本は開幕から6連勝で決勝進出に王手をかけ、4日からは舞台を高校野球の聖地、甲子園に移す。西谷監督は「われわれは甲子園に特別な思いを持っている。パワーを受け取りたい」と初の世界一に向け、視線を先に移した。【高場泉穂】