怪物も自画自賛の特大アーチだった。早実(西東京)の清宮幸太郎内野手(1年)が、高校入学後、公式戦初の場外弾を放った。秋季都大会ブロック予選の保谷戦に「3番一塁」で先発し、6回1死二、三塁から右翼席場外へ推定130メートルの特大3ラン。初回の先制打を含む2安打4打点の活躍で都大会本戦(10月10日開幕)に導いた。これで高校通算本塁打を18に伸ばし、「(3年間で)80本打てればいい」と堂々のキヨミー節も飛び出した。

 会心の1発に、清宮の笑顔がはじけた。4-0の6回1死二、三塁。保谷の横手投げ右腕が投じた真ん中低めの3球目を完璧に捉えた。両翼98メートルの上柚木(かみゆぎ)公園球場の右翼席後方にある、高さ約5メートルの防護ネットを越える場外3ラン。「気持ちよかった。打った瞬間に行ったと思った。(春の)関東第一戦も飛びましたけど、公式戦では一番飛んだかな。会心の当たりでした。今日の(ホームラン)が一番好きですね」と満足そうに振り返った。

 1年生離れした「修正力」を見せつけた。5回の第3打席、甘く入った変化球を打ち損じて中飛。今秋7打席目で初の凡退だった。「少しスライスして当たった」という失敗を引きずるどころか、直後の6回に「フォロースルーを大きくすることを意識して、前でさばいてバットに乗せる感じ」と、微調整しただけで特大アーチを放った。和泉実監督(54)は「泳ぎ気味だった前の打席から修正する力がある」と目を細めた。

 本塁打量産のきっかけは“モノマネ”だった。不振に陥ったU18(18歳以下)W杯は「(ボールを捉える)ポイントが近くて、窮屈に打っちゃうことが多かった」と振り返る。自覚はあったが「いろんな人にバッティングのマネをされても窮屈な振り方をされるんで、あまり良くないと思った」。新チーム合流後は「ポイントを前に」「フォロースルーを大きく」の2点をテーマに、豪快なフォームを取り戻すことに専念。成果はすぐに表れた。「いい場面で1本出てますし、調子が上がってきた証拠」と手応えをつかんだ。

 日本の高校生と対戦した公式戦全16試合でヒットを打ち続ける規格外の16歳は、具体的な目標を口にした。「飛ばすことが自分の長所。試合数とかいろいろあって何とも言えないですけど、80本打てればいいと思います」と言った。入学からわずか5カ月で高校通算18本。公式戦でも6本目。決して不可能な数字ではない。

 自らのバットで、来年春のセンバツ出場に1歩近づいた。10月10日に開幕する都大会本戦の前に臨む国体は、U18W杯のメンバーも数多く顔をそろえる。唯一の1年生だった清宮は「ちゃんと『こんにちは』とあいさつします」と笑った。優しく、厳しく接してくれた先輩に、心身ともに成長した姿を見せる。【鹿野雄太】