ロッキー作戦で絶対王者を止めた。磐城が春季県大会6連覇中の聖光学院に延長10回、10-9で競り勝った。両軍合わせて20四死球27安打の乱戦だったが、映画「ロッキー」好きの木村保監督(45)がイニングをボクシングのラウンドに見立て序盤、中盤、終盤に区分け。気持ちを高ぶらせ続けて最後に打ち勝ち、春季東北大会行きを決めた。聖光学院は08年の春季県大会1回戦で同じく磐城に負けて以来、8年ぶりに公立校に敗れた。

 打たれても、打たれても、磐城ナインの目に宿る闘志は消えなかった。同点の延長10回無死一、三塁。打席に立った神田大河内野手(3年)は木村監督の言葉をかみしめた。「最終回にカウンターパンチで勝とう」。2球目。135キロの直球に食らいついた。打球は大きな中飛となる。三塁走者がタッチアップで悠々と生還し、勝ち越し。泥臭く、打ち合いを制した。

 気分はリングに立つ、ロッキーだった。赤コーナーは春6連覇中の絶対王者・聖光学院。試合前、木村監督は選手に語りかけた。「9イニングで入ると苦しくなる。1R(ラウンド)ずつ勝負だ」。ボクシングに例え、1回ずつの攻守を判定してポイントを奪えたか確認する。5回まででスコアは6-8。3Rは落としたが、2R取った。「残り4R、どこか1R取ろうぜ」。6回前に活を入れた。「バットが振れる子たちなんで」と乱打戦で勝てる自信があった。

 投手の心もたきつけていた。連投を見据え、準決勝ではエース戸田を温存すると決定していた。17日に2番手以降の投手陣に起用を宣言。「投げたくてウズウズしてたんでね」と大一番をあえて伏兵に任せた。3番手で6回2/3を投げた佐藤啓太投手(3年)は「びびるより、やるしかない。ひるまずに攻め続けられた」と思い切り腕を振った。

 決勝打を放った神田は「須賀川との試合を見てこれはいけると思った」と2回戦で聖光学院が一時5点差をつけられた一戦で恐怖心がなくなったと振り返る。公立校がじわじわ効かせていたボディーブロー。磐城の一撃が王者をKOした。【島根純】