前橋育英(群馬1位)の「背番号11」、皆川喬涼(きょうすけ)投手(2年)が関東第一(東京1位)を1安打に抑え、7回コールドで13年以来2度目の決勝進出を決めた。超スローボールで約50キロの緩急をつけ、今春センバツ出場校を手玉に取った。

 皆川の投げた山なりのボールが、ストンとミットに収まった。表示は85キロ。時に計測不能になるほどのゆる~いボールが、センバツ出場校を幻惑させた。「タイミングをずらしたいと思った時に投げました。捕手のサインです」。公式戦2度目の先発だった「背番号11」は、7回をわずか1安打に抑えた。

 130キロ台の真っすぐと、直球の握りで放るスローボールの球速差は約50キロだ。相手は打ち気にはやる関東第一打線。森田健斗捕手(3年)の提案で、初めてスローボールを解禁した。のらりくらりと投げ、7回1死後、2番本橋に右前打を打たれるまで無安打投球だった。皆川は「5回ぐらいに(安打)ゼロと気付きましたが、そこから丁寧に投げようと思いました」と冷静だった。

 中学時に20本塁打を放った打撃が買われ、1年秋は外野手だった。「今もあまり投手の練習はしていません。3対7ぐらいかな」と笑う。しかし、ほんわかした口調とは対照的に根は負けず嫌い。「どちらもやって2つとも成功したい。(卒業後も)上でやって、どちらかに決めたい」と描く。今日は投手として与えられたチャンスを最大限に生かした。

 西武高橋光を擁し、夏の甲子園で優勝した13年以来の決勝進出を果たした。荒井直樹監督(51)は「夏に向けて投手が一番大事になってくる。2年生が頑張ってくれていい競争が生まれている」と手応えをつかみ、今日25日横浜との決勝に挑む。【和田美保】