驚きの1発で優勝に導いた。酒田南が東海大山形に11-7で打ち勝ち、春の山形で5年ぶり5回目の頂点に立った。4番に座るプロ注目の石垣雅海主将(3年)が1点を追う5回に左翼へ2ランを放つなど、活躍した。豪快なフォロースルーはソフトバンク柳田にそっくり。試合中にハチに刺されるアクシデントもあったが、主砲の高校通算30本目となる節目の本塁打がチームに勢いをつけた。

 異次元の弾道だった。1点を追う5回2死二塁。石垣は狙いすましていた。カウント0-1からの2球目。「1打席目でタイミングがあっていなかったから、絶対に来る」。内角高めに来るスローカーブを読んだ。腰がねじ切れんばかりのフルスイングで捉えた打球は高く、高く、青空に弧を描く。左翼手は数歩下がっただけ。白球がフェンスを越えるのをぼうぜんと見つめた。推定110メートル弾。「こすったんですけど。うまく上がってくれた。入るとは」と本人も驚く1発だ。

 信条はフルスイングだ。「半端なスイングはつまらない。振るところは振って、相手の脅威になりたい」。お手本は2人のトリプルスリー。フォームはソフトバンク柳田、打球を捉えるのはヤクルト山田をイメージする。「柳田さんは憧れ。でも理想は山田さん。コンパクトにフルスイングしたい。最短距離でキュッと捉える感じ」と話す。そこから、インパクトの瞬間に右手を押し込む。捉えた瞬間に球へ強烈な回転をかけられ「弾道が上がっていくんです」と説明した。

 素顔はちょっぴり天然キャラ。大会中の体重維持のために小腹が空いたら白米と牛乳をかき込む。おかずはない。「やっぱりはえぬきです」と山形米を愛する。5回裏の守備ではなぜかハチに刺された。「チクッともしなかった。でも黄色いフンみたいのがついてた」。頼れる主将だが鈴木剛監督(34)は「不思議な子です」と笑う。さぁ東北大会へ。プロ注目の大砲から目が離せない。【島根純】