春の円山で、1年生がキラリ輝いた。開幕戦に臨んだ札幌大谷は、3点差を追い付かれた直後の7回2死一、二塁で、2番金沢勇士三塁手(1年)が勝ち越しの適時二塁打。マウンドではエースナンバーを背負う菊地吏玖(りく)投手(1年)が125球を投げ抜き、6-4で立命館慶祥(札幌)を退けた。札幌大谷は春の道大会初勝利。

 若葉の季節にふさわしく、ルーキーたちが伸びやかに躍動した。3点リードを追い付かれ、迎えた7回。2死一、二塁で打席に立った札幌大谷の金沢は「三振した2打席目ではタイミングが早すぎた。もっとボールを引きつけてセンター返ししようと思った」と冷静だった。外寄りの直球を捉え、狙い通り左中間へ。1年生らしからぬ対応力で、勝ち越し点をたたき出した。

 マウンドでは、同級生のエース菊地が4点を失いながらも踏ん張った。公式練習があった前日29日に、まさかの寝坊。集合時間に10分遅れ、練習に参加させてもらえなかった。船尾隆広監督(43)は「寝坊した時点で、完投させることを決めていた」とニヤリ。「失態を払拭(ふっしょく)する投球をしてこい」と指揮官に送り出された身長181センチの本格派右腕は、再三、得点圏に走者を背負っても、全く動じない。「相手の応援とか雰囲気が楽しく、マウンドを降りたくないと思った」という強心臓で9回を3者凡退に仕留めると、両腕を天に突き上げ、入学して約2カ月で達成した公式戦初完投を無邪気に喜んだ。

 金沢、菊地、5番を担う細谷健と3人の1年生が主力で活躍。3人の合言葉は「全力」だ。道具準備や練習、試合でも手は抜かない。上級生に代わって試合に出ている責任感を、しっかりと胸に刻む。金沢は「一生懸命やって、先輩たちに恩返しがしたい。僕らが頑張って、甲子園へ連れて行きたい」。冷静で、堂々として、ふてぶてしささえ漂う。ちょっぴり大人びたルーキーたちが、チームをぐんと勢いづける。【中島宙恵】