2年連続出場の札幌大谷が、昨秋全道準優勝の北海道栄を6-2で下し、創部8年目で3季通じて初優勝を飾った。1点を追う7回に追い付くと、8回に元日本ハム選手を兄に持つ渡部賢人遊撃手(3年)の左犠飛で勝ち越しに成功。9回、渡部の2点適時打など四球を挟む4連打で突き放した。1回戦から全4試合で2桁安打。強豪連破で自信を手にしたダークホースが、新王者となった。

 歴史的な瞬間を、全校生徒約1000人の目の前で迎えた。9回2死一、二塁。札幌大谷の渡部は遊ゴロを難なくさばくと、ガッツポーズでマウンドへ駆け寄った。昨秋はベンチ外だった背番号6が、今はこんなにたくましい。3季通じての初優勝に船尾隆広監督(45)は「学年に関係なく力のある者を使い、日替わりで活躍してくれた」。1試合ごとに成長する選手たちが、まぶしかった。

 決勝の主役は、遊撃守備が安定している6番渡部が射止めた。兄は元日本ハムの捕手で、現在は2軍サブマネジャーなどを務める龍一氏(30)。投手として活躍した父勝美氏(53)は、バルセロナ五輪銅メダリストというサラブレッドだ。千葉から応援に駆けつけた兄がスタンドで見守る中、8回に勝ち越しの左犠飛、9回にも2点適時打を左前へ運び、この日2安打3打点と気を吐いた。

 「打撃が弱い。レギュラーにするには物足りない」と昨秋、船尾監督に通告された男が、ひと冬で打撃開眼した。1回戦から全4試合で2桁安打、計29得点の強打線にあって、通算6打点のチーム打点王は「パワーがないので、みんなに追い付けるようバットを振った成果」と胸を張った。

 渡部をはじめベンチ入り9人が札幌大谷中の出身。3年生は中学時代の2年間、当時、中等部野球部コーチだった船尾監督の指導を受けている。「やんちゃな世代で、中学時代はチームとしてまとまらなかった」が、昨秋の札幌地区3回戦で札幌第一に5回コールド負けを喫してから、選手たちの目の色がガラリと変わった。

 3週間後には、夏の地区予選が開幕する。「自信が過信にならないようにしたい」と船尾監督。喜びに浸る間もなく、本命の季節がやってくる。【中島宙恵】