98年生まれの右腕が再び歴史をつくる。第98回全国高校野球神奈川大会(7月10日開幕)の組み合わせ抽選会が11日、横浜市内で行われた。188校が参加する激戦区で、横浜の最速152キロ右腕、藤平尚真投手(3年)が最初で最後の甲子園出場に挑む。昨夏の雪辱に燃えるドラフト上位候補は、全国制覇とOBの松坂大輔投手(35=ソフトバンク)超えを目標とした。2回戦(17日、保土ケ谷)でサレジオ学院-向の岡工の勝者と対戦。同校3年ぶりの夏の甲子園を目指す。

 藤平にとって、高校生活最後の夏がやってきた。自身初となる甲子園出場をかけた戦いが、いよいよ始まる。「神奈川を圧勝して甲子園に行きたいです。そして、まだまだ偉大すぎますが、松坂さんのように全国制覇を達成したいです」。98年に甲子園春夏連覇を達成した大先輩の名を口にした。これも、高校NO・1右腕の並々ならぬ決意の表れだ。

 昨夏は、神奈川大会決勝で東海大相模に敗れた。中日ドラフト1位の小笠原慎之介投手(18)に完封負け。立ち上がれないほど号泣した。秋季関東大会は初戦負け。センバツ出場も逃した。藤平は、あらためてエースとは何かを考えた。「取り組む姿勢を変えないといけないと思った。嫌な練習でも前向きに、お手本にならないといけないと思いました」。

 自覚が芽生えた。平田徹監督(33)の下で、チームは昨冬から本格的な体作りに取り組み始めた。藤平は練習後、週4回トレーニングジムへ通った。体重は約10キロ増え85キロになった。「体が重くなって走るのがつらくなりました。でも、先頭で走るようにしています」。意識も変わった。「投げない時も戦力になりたい」と、フリー打撃を終えると右翼の守備につく。野手としても率先して練習した。

 春は「背番号10」だったが、自分の力でエースナンバーを取り戻した。藤平は「うれしいというより、しっかり結果を残さないといけない気持ちが強いです」と言った。抽選の結果、東海大相模とは昨年同様、勝ち進めば決勝で戦う。甲子園に出たら全国制覇と並ぶ夢がある。「松坂さんが(98年夏に)甲子園で出した151キロを、甲子園で超えたいです」。神奈川の頂点に立ち、98年生まれの藤平が横浜の歴史を塗り替える。【和田美保】