今春のセンバツに出場した札幌第一が先発全員の14安打を放ち、札幌工に10-3で逆転勝ち。春夏連続の甲子園出場へ向け、コールド発進した。

 先発したエース上出拓真(3年)が立ち上がりに3点を失う厳しい展開も、2回に自ら同点2ラン。4回には自身初となる2打席連続の勝ち越し弾で、打線を勢いづけた。

 先発マウンドに上がった札幌第一のエース兼主将の上出は、立ち上がりの1回に直球を狙われ、4長短打を浴びて3失点。「真っすぐが指にかからず、変化球も抜ける。投げたいところに投げられず、ヤバいかなと思った」。一抹の不安を消したのは、バットだった。2回の第1打席、内寄りの直球をフルスイング。「捉えた感じはあった」という打球は、左翼ポール際のフェンスを越えた。汚名返上の同点2ランに、思わず口元が緩んだ。

 同点で迎えた4回の第2打席に、再び直球を強振。ふらふらと上がった打球は、ゆっくりと放物線を描きながら左翼芝生席で跳ねた。「ちょっと、何が起きたのかよく分からなかったです」。高校通算3本目。小3で野球を始めてから1試合2発は、練習試合を含めても記憶にない。「気持ち良かった」。野球人生初の2打席連続アーチに戸惑い、驚き、そして喜びが全身を貫いた。

 打撃が得意な方ではない。今春のセンバツで初めて4番に抜てきされたが、敗れた1回戦の木更津総合(千葉)戦で4打数無安打で3三振。以来、自宅で毎日20~30分、試合をイメージしながらの素振りを欠かさず、最後の夏に備えた。この日の打順は、初制覇した昨秋の全道大会同様、8番に〝降格〟も「やっぱり落ち着きますね」と照れ笑いだ。

 上出の勝ち越し弾に始まり、チームは4回、打者一巡の猛攻で一挙6点。投球では、変化球の割合を増やした2回以降にエースの本領を発揮し、6回までに10三振を奪って追加点を許さなかった。菊池雄人監督(44)は「夏は甘くない。(2本塁打は)キャプテンとしての仕事でしょう」と背番号1をたたえた。終わってみれば、快勝発進。道勢10校目となる春夏連続甲子園への挑戦が今、幕を開けた。【中島宙恵】