第98回全国高等学校野球選手権鹿児島大会が2日、開幕した。県立鴨池球場で行われた開会式直後の開幕戦では、種子島中央が10-3で志学館に7回コールド勝ち。エース熊野斗真(とうま)投手(3年)が志学館打線を1安打3失点(自責0)に抑える好投。打ってもランニングホームランを放つなど、攻守に渡る活躍で、夏6年ぶりの勝利を収めた。

 最高気温32・5度の南国の照りつける日差しの中で、鹿児島勢初白星を挙げたのは種子島中央だった。立役者はエース熊野だ。投げては7回1安打。3回には高校入学以来初という中越え2点ランニングホームランを放ち、4回にも右越え2点三塁打。「開幕戦で最初は緊張したけど、応援してくれる島の方たちに勝って恩返しがしたかった。離島でも勝てるのを見せたかった」と胸を張った。

 離島のハンディを団結力ではね返した。種子島には「皆一緒に」という意味の「よいらーいき」という方言がある。鹿児島に遠征できるのは夏、春、5月の連休の3度だけ。部員たちは年末の約10日間、全員で島内の郵便局で年賀はがきの仕分けのアルバイトをし、遠征費の足しにしてきた。

 普段の練習試合の相手は、同じ島内の種子島と、隣島にある屋久島の2校だけ。種子島は13年に全国中学校軟式野球大会で優勝した種子島中の出身者ばかりで、3年生は26失点の大敗からのスタートだった。今年4月に1年生9人が加わるまでは部員10人。紅白戦もできず、監督が捕手を務めた。学校のグラウンドにはネットがなく、できる練習も限られるが、週末には地元中種子町管理の野球場を無償で借り、大会に備えてきた。苦労が多い分、勝利の味は格別だった。

 町田友和監督(37)も「離島のハンディはあるが、県大会で勝ったことは大きな財産」。明日4日の2回戦の後、チームは1度、種子島に戻る。9日の3回戦に勝つと、そのまま鹿児島に残るため、3年生は10日の参院選には行けない。18歳の熊野は「次勝ったら、期日前投票に行こうと思います」。先に投票を済ませ、試合に集中-。目指すは08年の学校創立以来、初の8強進出だ。【福岡吉央】