東海大甲府(山梨)の小野寺瑞生投手と渡部雄大投手(ともに1年)が、黄金時代の到来を告げる。小野寺は中学で最速143キロをマークした184センチの大型右腕。渡部は多彩な変化球と抜群の制球を誇る左腕で、ともに今夏のベンチ入りが見えてきた。県内30連勝中のチームを3年連続の夏の聖地に導き、2年後の100回大会の主役になる。

 中学時代に関東NO・1右腕、北海道NO・1左腕との呼び声高かった2人が、全国制覇だけを見据えて東海大甲府にやってきた。入学直後からAチーム(1軍)に入り、春の県大会でデビューを果たした。小野寺は「エースになって甲子園で優勝する」。渡部も「日本一の左ピッチャーになる」。高校球界を代表する投手になるために、厳しい練習に食らいついている。

 すでに大器の片りんを見せている。小野寺は6月26日の鹿島学園(茨城)との練習試合で9回3安打6奪三振で完封。小野寺は「みなさんに守っていただいたからこそです」と控えめに振り返ったが、村中秀人監督(58)は驚きを隠さなかった。「1年生のこの時期で完封した子は、監督人生でも初めてじゃないかな。球速も相手のスピードガンで140キロ出ていたみたい」。大阪桐蔭、東海大相模(神奈川)、常総学院(茨城)など全国屈指の強豪を含む30校以上から声がかかった能力は本物だ。

 渡部も負けてはいない。直球は130キロ前後ながら、正確に内外角を投げ分ける制球力で抑え込む。中2の段階で、球速がなくても抑えることに全力を注いだ。「ダルビッシュ有の変化球バイブル」を読み込み、カーブ、スライダー、チェンジアップ、シュートを操る。練習試合などでも大崩れせず、関東大会では1年生で唯一ベンチ入り。「結果を出せてビックリしているけど、右打者の内角と左打者の外角は打たれる気がしません」と胸を張る。

 県内30連勝中のチームを引っ張る上級生も能力の高さを認めた。エース菊地大輝(3年)は「小野寺は直球だけじゃなくて、もう変化球でストライクが取れる。渡部のコントロールは“神”ですよ」。同じ右腕の小野寺には、得意のチェンジアップを伝授した。

 ライバルでありながら、互いを高め合っている。小野寺は速球を投げるための体重移動、渡部は変化球の握りを教える。渡部は「小野寺が甲府に行くといううわさを聞いて、一緒に全国制覇したいと思った」。小野寺は「連勝記録は絶対に止めない」と言った。まずは今年の夏、全国に名前をとどろかせる。【鹿野雄太】

 ◆小野寺瑞生(おのでら・みずき)2000年(平12)7月30日、山口・宇部市生まれ。東京・大田区で育つ。6歳から北椛谷フェニックスでソフトボールを始める。小2からフレールで軟式野球を始める。5年から池上本町少年野球部に所属。椛谷中では狭山西武ボーイズに所属。2年夏から川崎中央シニア。右投げ右打ち。184センチ、95キロ。家族は両親と兄、妹2人。

 ◆渡部雄大(わたなべ・ゆうだい)2000年(平12)4月4日、北海道・函館市生まれ。北昭和小1年から昭和レンジャーズで野球を始める。亀田中では函館港西シニアに所属。2年時に北海道選抜に選ばれる。3年春、夏に全国大会出場。左投げ左打ち。180センチ、81キロ。家族は両親と兄2人。