盛岡工が昨夏代表の花巻東を3-1で撃破し、3回戦に進出した。166センチのエース右腕・安保成(あんぼ・じょう)投手(3年)が左足を大きく上げてひねりを加えるトルネード投法で、9回4安打5奪三振で完投した。6回に先制されたが、8回に3安打3死球で3点を奪い逆転した。

 「小さなトルネード」安保が、強力花巻東打線をのみ込んだ。体に巻き付けるように高く上げた左足の反動を利用して、166センチ、68キロの体を大きく躍動させる。最速135キロの直球と鋭く曲がるスライダーを、雄たけびを上げながら投げ込んだ。「相手を威嚇するつもりで、勢いよく投げた。先制されたけど、走者は出ていたので逆転できると信じていた」。3安打10奪三振で9回完封した花巻農との1回戦から、2戦連続の力投で金星をつかんだ。

 春の県大会後にフォームを崩すも、昨秋から取り組んでいた左足を高く上げる自己流のスタイルに戻して復調した。「最近は調子は良くなかったけど、ぎりぎりまでシャドーを繰り返して固めてきた」。冬の間に取り組んだ下半身強化も生き始めた。日々の練習に1時間の筋トレを加えたことで、62キロから6キロも増量し、豪快なフォームを支えられるようになった。「下半身から崩れていたけど、今は粘れるようになってきた」と胸を張った。

 安保の名前にも秘密が隠されていた。スタンドで息子の勇姿を見守った父功さん(55)は「自分と息子の名前を足すと“成功”。読み方は“成就”から“じょう”をもらいました」と明かした。打倒花巻東に“成功”し、創部70周年の節目の年に、34年ぶりの悲願“成就”を達成する。「1戦1戦上を見ずに戦う。次も期待して下さい」と言い放った安保の右腕がこの夏、「盛工旋風」を巻き起こす。【高橋洋平】

 ◆安保成(あんぼ・じょう)1998年(平10)6月25日、盛岡市生まれ。土淵小2年時に土淵ボンバーズで野球を始め、土淵中2年で捕手から投手に転向。盛岡工では高2春からベンチ入りし、高2秋から背番号1。166センチ、68キロ。右投げ右打ち。家族は両親と姉3人。