日大三がデッドヒートを制し、3年ぶりの頂点へ前進した。第98回全国高校野球選手権の西東京大会で、日大三が9回裏の土壇場で4点を奪い、佼成学園に逆転サヨナラ勝ちした。6-9で迎えた9回裏、1点差に迫りなおも無死一、三塁で浜本広幸外野手(3年)が同点打を放ち、プロ注目の坂倉将吾捕手(3年)が中堅へサヨナラの犠飛を放った。5回に5点をとった後、6回に8点を奪い返された激闘に、日大三が10-9で決着をつけた。

 照りつける太陽以上の熱闘が繰り広げられた。9回裏。表で佼成学園に1点を追加され、差は3点に広がっていた。それでも、日大三には発揮できるだけの底力があった。同点に追い付き、2番谷田部翔太内野手(3年)が敬遠された。1死満塁。坂倉が左打席に入った。「何も考えずに打ちました。うれしい。ただそれだけです」。ヤクルトなど8球団のスカウトが視察する中、腹をくくって振り抜いた打球は中堅へのサヨナラ犠飛となった。

 勝負は最後まで分からなかった。5回に0-0の均衡を破った。先頭の1番宮木紳道主将(3年)が、この日3安打目となる中前打を放った。そこから打者一巡の猛攻で、長短合わせて5安打を放ち5点を奪った。一塁側スタンドは歓喜に沸き、試合を決めたかに思われた。しかし、そうはいかなかった。6回に満塁弾含む8点を奪われ、一瞬にして形成が逆転した。

 先発の桜井周斗投手(2年)は、1度は右翼に就き、再びマウンドへ戻った。日大三が4投手をつぎ込めば、佼成学園も5投手を送り込む総力戦となった。不調を脱し、4安打した宮木は言った。「こうやって(試合が)終わっていくのかなって、一瞬思いました。みんな打ってくれて本当に良かった。去年の夏は何も力になれなかったので、その悔しさを晴らしたいです」。思わず弱気の虫が出るほどの激戦だった。勝利の安堵(あんど)に、大粒の涙がこぼれた。

 劇的な勝利にも、ナインに浮かれたそぶりはなかった。6回の大量失点は失策から始まったもの。小倉全由監督(59)も厳しい表情を崩さなかった。「選手は頑張った。でも、負けゲームを拾えたようなもの。こういう思いをしたんだから、しっかり勝っていかないとならない」。昨夏準決勝で敗れた早実とは、勝ち上がれば決勝で当たる。借りを返すまで、絶対に負けられない。【和田美保】