プレーバック日刊スポーツ! 過去の7月28日付紙面を振り返ります。2014年の1面(東京版)は、星稜甲子園 0対8から9回9点でサヨナラでした。

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<2014年高校野球石川大会:星稜9-8小松大谷>◇28日◇決勝◇石川県立

 星稜(石川)が9回裏に8点差を逆転する、まさかの大逆転サヨナラ劇で、2年連続17度目の甲子園出場を決めた。第96回全国高校野球選手権石川大会の決勝が27日、石川県立野球場で行われた。星稜は9回表終了時点で0-8と小松大谷に大量リードを許したが、岩下大輝投手(3年)の左翼席場外への2ランなどで追い付き、5番佐竹海音捕手(2年)が左越えサヨナラ打。元ヤンキース松井秀喜氏(40)、サッカーACミラン本田圭佑(28)らの後輩たちが、どこよりも熱い勝利で甲子園に乗り込む。

 誰もが信じられない結末に、真夏の石川県立野球場が沸いた。8点差を追い付き、なお9回裏2死一、三塁。5番佐竹が1ストライクからの2球目、外角高めに入ったカーブを振り抜く。左翼手の頭上を高々と越えて、打球はフェンスまで転々と転がった。

 奇跡的な逆転サヨナラ劇に、ベンチから選手が飛び出し、抱き合って、泣いた。小松大谷ナインは、ぼうぜんと立ち尽くして、整列に加われない。林和成監督(39)は「まだ実感が湧かない」と興奮した。

 0-8で迎えた9回裏。決勝でなければ、7点差で終了する7回コールドで、すでに試合は終わっていた。一塁側スタンドにもあきらめムードが漂う中、大逆転劇が始まった。四球、適時三塁打で1点を返すと、さらに右前適時打で2-8。6番梁瀬彪慶内野手(2年)が2点左前適時打を放ち4-8まで追い上げた。

 球場のボルテージが上がる中、無死一塁でドラフト候補のエース岩下が打席に立った。9回から再登板し、3者連続三振で流れを引き寄せていた。2球目。吸い込まれるように甘く入ったカーブをすくい上げる。左翼席場外に消える2ランに、一塁側アルプスに右手を突き上げて、ベース1周を決めた。さらに2死一、二塁と攻め、4番村上千馬内野手(3年)の中前適時打でついに同点に追い付いた。相手失策はなく、打者13人で8安打を放ち、9点を奪う猛攻だった。

 星稜は79年夏に箕島と延長18回を戦う名勝負を演じ、敗れたものの日本中の話題となった。92年夏には、元ヤンキース松井氏が明徳義塾戦で5打席連続敬遠され、やはり注目された。今回は、甲子園出場を懸けた試合で、再び記憶に残る、大逆転サヨナラ劇を決めた。村中健哉主将(3年)は「日本一を目標にやっているので、甲子園で校歌を1回でも多く歌えるように頑張りたい」と言った。これ以上ない勢いをつけ、2年連続の聖地に乗り込む。

 ◆星稜 1962年(昭37)「実践第二高等学校」として創立された私立校。63年から現校名。生徒数は1706人(女子786人)。野球部は62年創部で、部員数は64人。甲子園出場は春11回、夏は今回で17回目。所在地は金沢市小坂町南206。干場久男校長。

 ▼27日に決まった11代表のうち、8校が逆転勝ちだった。今年はこれまでに決まった全国33代表のうち19校が地方大会決勝で逆転勝ち。8点差星稜の他にも、佐久長聖と東海大甲府が5点差、聖光学院が4点差を逆転とドラマチックな展開が目立つ。

 ▼コールド規定 日本高野連の特別規定では「正式試合となるコールドゲームを採用する場合は、5回10点、7回7点と統一する。ただし、選抜高等学校野球大会ならびに全国高等学校野球選手権大会では適用しない」とある。各地方大会では決勝のみ適用されない。

 <主な大逆転劇>     

 ◆決勝では異例 地方大会決勝では58年明治、86年学法石川、01年聖光学院が4点差を逆転サヨナラ勝ちしているが、8点差はない。また、サヨナラではないが98年秋田大会決勝で、金足農が秋田商を相手に6回終了時10点差(6-16)を逆転し17-16で勝った。

 ◆9点差逆転サヨナラ 02年夏の大分大会2回戦で中津北が5-14から9回裏、4連続押し出しや満塁走者一掃二塁打などで一挙10点。緒方工に15-14でサヨナラ勝ち。

 ◆逆転の報徳 61年夏の甲子園1回戦で報徳学園が延長11回表、倉敷工に6点を奪われながら裏に6点を取り返し12回7-6でサヨナラ勝ち。

 ◆甲子園の8点差 春夏で逆転勝ちの最大得点差は97年夏1回戦で市船橋が文徳に1-9→17-10で勝った8点差。逆転サヨナラの最大は04年春の済美7-6東北、06年夏の智弁和歌山13-12帝京の各4点差。

 ◆プロ野球では 逆転サヨナラの最大差は6点。93年6月5日に近鉄がダイエー戦の9回裏、2-8から9-8。

※記録や表記は当時のもの