第98回全国高等学校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)沖縄大会決勝が17日行われ、嘉手納が11-3で美里工を下し、創部33年目で夏の甲子園初出場を決めた。初回に6点を奪って逆転するなど、打線が爆発。11得点は56年沖縄県高野連発足以来、決勝での最多得点となった。近くに米軍基地があり、練習でも声が届かないハンディを乗り越えて、全国47都道府県のトップを切って甲子園切符をつかんだ。

 準決勝まで眠っていた嘉手納打線が、最高気温32・7度の炎天下の決勝で目覚めた。2点を先制された初回に5連打などで一挙6点の逆転劇。試合の主導権を握ると、中盤以降もコンスタントに得点を重ね、圧勝で甲子園出場を決めた。

 打力には自信があった。1月に行われた沖縄県高校野球部対抗競技会では、ティー打撃の9人の飛距離の平均値を出す打撃部門で県1位。4回に高校通算28本目となる左越えソロを放った主将の大石哲汰内野手(3年)は個人でも3位となる114メートルを記録。強豪の興南、沖縄尚学からの誘いを断り「普通の高校で甲子園を目指して力を試したかった」といい「準決勝まで打線が打てず(エース)仲地に迷惑をかけていたので、最後に打ててよかった」と胸をなで下ろした。

 大蔵宗元監督(42)は、かつて沖縄水産で4年間コーチを務め、故栽弘義監督(享年65)の下で指導者としての下地をつくった。「栽先生に比べたら僕はまだ甘いが、私立とは土俵が違う公立で、野球好きな選手たちに、やる気を持たせる指導をしてきた」ことが実った。「低めは打たず、浮いた高めの球を打つ」というチーム方針も準決勝まで徹底できていなかったが、最後に決まり事を守って圧勝。指揮官は「うちはのんびり屋の調子ものが多いが、最後は嘉手納らしい野球ができた」と喜びをかみしめた。

 町の人口は約1万4000人。米軍基地が町の面積の8割以上を占める。学校から約500メートルの位置に基地があり、練習中は飛行機が離着陸する度に声が消される。1メートルの距離でも声が聞こえないため、監督はハンドマイクやメガホンで指示。公立校で専用グラウンドもなく、満足に練習はできないが、多くのハンディを乗り越えての夏初出場でもあった。

 憧れの地で目指すは10年の興南以来、県勢2度目の優勝だ。大石主将は「沖縄は毎年甲子園で注目されるので、レベルが高いことを見せつけたい」と、目を輝かせた。【福岡吉央】

 ◆嘉手納 1984年(昭59)創立の公立校。総合学科のみで生徒数656人(女子332人)。野球部創部は84年。部員数71人。10年春に甲子園出場(初戦敗退)。夏は初出場。所在地は沖縄県中頭郡嘉手納町屋良806。上原俊幸校長。

◆Vへの足跡◆

1回戦7-0具志川商

2回戦11-2北中城

3回戦2-1興南

準々決勝2-1八重山商工

準決勝3-0那覇西

決勝11-3美里工