今春の九州大会準Vの西日本短大付が5-0で三井を下しベスト16に駒を進めた。夏初登板初先発のチームで最も身長の低い158センチ左腕、福井蒼翠(そうすい)投手(3年)が5安打完封した。3日前には、OBで楽天小野郁投手(19)が母校を訪れ激励。エース谷口碧投手(3年)が温存でき、万全の態勢で大一番の昨夏代表校・九州国際大付との5回戦に臨む。

 10年以来、6度目の夏甲子園へ、西日本短大付が快勝でベスト16入りだ。部員80人以上で最も身長の高い192センチの部員がいるなか、最も低い158センチの福井がチーム一の“孝行息子”になった。夏初登板初先発の重責をはねのけ5安打完封。9回2死一塁。最後の打者を得意のカットボールで二ゴロに打ち取り「気持ちが高ぶった」と思わず左手でガッツポーズ。185センチの横尾忠孝捕手(2年)とタッチをかわし笑みがこぼれた。

 今春準Vの九州大会準決勝で先発し長崎日大撃破に貢献して以来の公式戦登板だったが、試合3日前に先発を告げられ奮い立った。直球は120キロ台ながら100キロ台のカーブや、カットなどを駆使し、5回以降に球が浮く課題もクリア。福井は「夏は1人じゃ厳しいし先発になったと思う」と責任を自覚し、初戦から2戦連続先発のエース谷口の温存につなげた。

 負けられない理由がある。母子家庭で高1の妹と小5の弟の「父親代わり」。高校卒業後は公務員を目指しており「最後の夏は思いきりやって悔いを残したくない」。試合3日前にOB楽天小野が母校訪問で激励。小野を擁した14年夏の準々決勝で敗れた九州国際大付と次戦で対決することに、福井は「小野さんの代でやられた借りを返す」と息巻いた。西村慎太郎監督(44)も「次元が違う大学生のようなチームだが3連覇を止めたい」と気合十分だ。

 福岡大大濠、九州産など優勝候補が早々に敗退する中、指揮官は「うちは強豪校とは思ってない」。気を引き締め直して大一番に臨む。【菊川光一】

 ◆福井蒼翠(ふくい・そうすい)1998年(平10)6月1日、福岡・田川市生まれ。野球は川崎小1年時に始める。川崎中を経て西日本短大付に進学。1年秋から背番号11。フォームはヤクルト小川が手本。趣味は読書。50メートル走6秒3。158センチ、58キロ。左投げ左打ち。